Eternal Sweet2 ページ7
「大丈夫。あなたが死んだことになっているというのなら、私は外で一切あなたの名前は出さないわ」
芝居は得意だ。根拠も記憶もないが自信はあった。
「じゃ……じゃあ、僕、下で待ってるね」
コナン君は一足早く玄関に向かって降りて行った。それにしてもコナン君はどうしてここに秀一がいると自信をもって、まっすぐやってこれたんだろう――。
彼はそんなに頻繁にここに出入りしてたのだろうか。
「A」
タバコをもみ消した秀一が立ち上がり私を抱き寄せる。
「日暮れまでには帰っておいで、待っているから」
瞳の奥が甘く揺れる。低い声に強く頷く。
「わかった。絶対にここに帰ってくるね」
唇が重なる。私はやっぱりずっと前からこのキスを知っている。
タバコと――そして、バーボンが混ざった香り。
「いってらっしゃい、いつまでもここで待ってます。Aさん――」
私の頭の上で呟かれた低い声は、秀一が発する口調ではなく――。
(眼鏡の似合う、あの人)
――あの人って、誰?
あの人も自分のことを「ゴースト」って言ってた。
記憶の奥で、何かが蠢く。
「いつまでもこうして二人っきりでいられたらよかったのに」
秀一の言葉が終わる前に「Aさーん、早く行こう?」下から私を呼ぶ元気な声が響く。
顔を上げた私に、ふわりといつもの甘い笑みを見せる。
私も同じだけの笑みを浮かべて部屋を出ると、外出用に小さなハンドバッグを手に取り玄関に向かった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月13日 17時