モーニングコーヒー3 ページ43
秀一はくすりと笑った。
「探偵は俺で、ボウヤはベイカー・ストリート・イレギュラーズという可能性は考えなかったか？」
「なるほどね」
ホームズの手足となって動く、ベイカー街の子供たちのことだ。
シャーロック・ホームズなら私も読んだことはある。
――ああ、そういうことは覚えているんだ。
「もっとも、彼らは時に依頼していない事件の鍵まで届けてくれるが――」
そういって秀一はベッドサイドにおいてある紙に手を伸ばす。
こちらにみせてくれないが、私が昨日元太君からもらった事故現場写真であることは間違いなさそう。
「それ、私の鞄から勝手に取ったでしょ？」
「落ちてきたんだよ、不可抗力だ」
自信を持った強い口調で、きっぱりそう言い切るあたり、本当敵わない。
「いいわ、別に。捨てるつもりだったし。何度も見る気はしないもの」
「そう？ 俺はひき逃げ範を探し出して射殺したいくらいには腹が立っているが――」
にこりともせずにむしろ真剣そのものの表情でそういうので、こっちの方が笑ってしまった。
「殺したいほど憎いっていうのは聞いたことあるけど。殺害方法が具体的すぎて驚いちゃったわ。秀一、面白い」
ハリウッド映画じゃあるまいし。銃刀法に厳しい日本で「銃殺」って、だいぶ難易度が高いのでは。
冗談めいた口調でそういうと、手を伸ばしてくしゃりと秀一の頭を撫でる。
背丈の高い彼が私の視線よりも下にいるなんて、今くらいだもん。
「私のために、そんなに怒らないで？ ゴーストは表舞台に出てはダメなんでしょう？」
いつもしてくれるように、彼の額に私が唇を落とす。そうして、彼が私を抱きすくめる前にするりと腕の中から抜け出し、寝室を後にした。
モーニングコーヒー4―赤井side―→←モーニングコーヒー2
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつり
| 作成日時：2022年5月13日 17時
