美術館の下見8 ページ28
「わかるわかる!
蘭だって、いい加減どこほっつき歩いているかわかんない旦那のことなんて忘れちゃってさ、青春を謳歌した方がいいって絶対!」
突然会話に入ってきた園子さん。
私の手を握っていたコナン君の表情が、露骨にぎくりと強張った。
「もうー、園子!いい加減にしないと、本当に京極さんに言うからね?」
今日何度目かのやり取りに、私は思わず吹き出してしまう。
「楽しそうでいいなあー」
「でしょ? 女子高生楽しめる時間なんて本当に短いんだから!楽しんだ方がいいですよね?」
園子さんの言葉に、私はうんうんとうなずいた。
――私にはそんな時間を味わうことはできなかったけど――
心の底で聞こえた声には耳をふさぐ。
警察たちは下見を終えて帰っていくところだった。
騒々しいにもほどがある。
次郎吉さんはやれやれと肩をすくめてその集団を見送っていた。
「キッドの罠ってところかな」
コナン君が呟く。
「ここに下見に来るために、あえて警察に予告状を送ったんだろう? 何のヒントもなさそうだし」
「え? じゃああの中にキッドがいるってこと?」
「おそらくな――。でも、何もしていない今の段階で捕まえたって意味がない」
面白そうに唇をゆがめて笑うコナン君から、年相応の幼さは微塵も見えなかった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月13日 17時