code-blue〜独りにしない〜

成長4 ページ13

スタッフステーションに白石を探しに行くとフェロー3人が机の回りにたかっていた。

そのうち２人はスマホを棚に立て掛け何やら見ている。

後ろからスッと除き込むと横峯は胸腔ドレーンのやり方を、灰谷は乗り物よいのツボをサイトで見ていた。

子供のような２人に思わずクスッと笑ってしまった。

白石は結局見つからず、そのまま診察室の方まで行くと緋山と先程の患者宮本さんの会話が聞こえてきた。

宮本さんはお父さんの悪口を緋山にぶつけていた。

緋「うわっ何してんの？」

ドアの向こう側の会話を盗み聞きしていたところ緋山が出てきた。

碧「ごめん、白石探してて」

緋「あぁそう。じゃ」

緋山は足早に去っていった。

私はノックしてから診察室へ入る。

するとちょうど宮本さんが部屋へ戻ろうとしているところだった。

碧「雪村さん、少し外してもらってもいいかな」

雪村さんが出ていったあと、私は車イスの向きを変えて丸椅子に座った。

碧「赤ちゃん産みたいの？」

宮「……はい。でもみんな反対してるの。さっきの、先生も見てたでしょ？」

さっきの、というのがICUでの言いあいだとすぐにわかった。

碧「子供を産んで育てるのって大変だよ？」

宮「分かってる、つもり」

碧「私にも3歳の娘がいる。2年半前くらいに離婚して、一人で育てるつもりだったんだけどね。無理だった。結局実家の母親にわざわざ来てもらって保育園の送迎も頼ってるし、そのあとのご飯とか寝かしつけとか全部やってもらってる。だからって職場の人に早く上がらせてくれなんてただでさえ人手不足なんだし迷惑かけるに決まってる。一人で育てるとか無謀なんだよね。正直子供がいなかったらなって思うこともある。それで最近とうとう言われちゃったんだよね、ママは居なくて大丈夫だよって。無理矢理時間を作ろうとする私を娘は気遣って優しさで言ってくれたっていうのは分かってるんだけど、結構……堪えた」

私は目元からこぼれ落ちた雫を拭った。

宮「先生は、娘さんを産んだこと後悔してるの？」

宮本さんの目は私をとらえて離さなかった。

私もその視線に応えた。



碧「後悔は、してない」

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