クロとヨリ ページ16
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"今日 黒酢の酢豚にした 🐷"
お、と声にでるくらいの大好物を準備してくれているらしいメッセージが届いて、帰宅する足取りに少し速度が乗る。
車に乗り込むなり機嫌の良さが滲んだ俺の雰囲気にマネージャーくんもご機嫌で、なんなら信号だってご機嫌らしく、高速を抜けてからほとんど止まらずにマンションへ。
気が合うね、と思いながら車を降りて愛しい彼女が待つ自宅へ帰れば、玄関でも既にいい香りが漂っている。
手洗いとうがいを済ませてキッチンへと向かうと、真剣に料理してくれているエプロン姿の彼女が見えて。
料理しながら時折タブレットを見ているから、その視線の先が気になって彼女の肩越しに覗き込む。
「おかえりなさい、潤くん」
「ただいま、懐かしいの観てんね」
「今日は妹の日なんだって」
「へえ、だからこの映画か」
「この頃にはまだ会ってないから新鮮なの」
「若いな」
「今でも充分若々しいよ？」
「そ？」
「そ。でも頼くんの時はやんちゃそうで素敵」
ふうん、と画面を観ながら少しの懐かしさに浸る。
やっぱ若いわ、色んな面で。と再確認していれば、潤くん胡椒とって、の声に手を伸ばして透明なミルを渡した。
「潤くんがお兄ちゃんだったら溺愛しそうだよね」
「あー、かもね。」
「ね？すごく優しいんだろうなあ」
「俺はAに一番優しくしてるけど」
「ふふ、ありがとう。じゃあこれ運んで？お兄ちゃん」
「……落とすかと思ったわ」
てきぱきと綺麗に皿に盛り付けられた美味そうな酢豚とサラダを手に持てば、視界の端でタブレットの映像を止めた彼女がエプロンを外す。
「でもAが妹だったら困る」
「どうして？」
「…」
俺の後ろについてスープを運ぶ彼女の手からトレイを受け取ってテーブルへ。
それから少し身を屈めて、きょとんと見上げる彼女の唇へひとつキスを。
「俺は世界中でAしか女に見えないから」
「………頼くんには流されないもん…」
「ふは、その間が流されてんだよもう」
「39歳の頼くんは危険…心にくる……」
「はいはい、腹減ったから飯食わせて」
恋する乙女みたいに胸を押さえながら ほう、と色の籠った息を吐く彼女に、Aしか女に見えないのは本当なんだけどな、と思いつつ。
愛しい彼女が丹精込めて作ってくれた俺の大好物を前にしてしまえば腹の虫が空腹を訴えて、ベッドに誘うのはもう少し後にしようと二人揃いの箸へ手を伸ばした。
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竜胆(プロフ) - あ ゆ 。さん» あ ゆ 。さん、いつも読んでくださっているとの事、とても嬉しく思います。更新分もお読みくださりありがとうございます。リクエスト、勿論大歓迎です。コメント欄でもマシュマロでも、お好みのところから送って頂ければ！楽しみにお待ちしております。 (2023年1月10日 2時) (
レス) id: 4b185b5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
あ ゆ 。(プロフ) - 竜胆さん、いつも楽しませていただいております。今日の投稿も、早速読ませていただきました〜。初めてコメントにお邪魔させていただいたのですが、リクエストさせていただくのは可能でしょうか…？ (2023年1月10日 0時) (レス) @page28 id: b4b41ea361 (このIDを非表示/違反報告)
エマ(プロフ) - リクエストお答え頂きありがとうございます！解釈が完全に一致してて嬉しくて面白かったです。これからも楽しみにしています！(返信不要です！) (2023年1月9日 23時) (レス) @page28 id: df9b0d8213 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - エマさん» エマさん、あけましておめでとうございます。拙くも、そして私独自の勝手な解釈ではありますが、楽しんで頂けますと幸いです。リクエスト有難うございました、こちらこそどうぞ本年も宜しくお願い致します。またお時間の許す際に覗きに来て頂けますと嬉しく思います。 (2023年1月9日 22時) (レス) @page28 id: 4b185b5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 名前さん» 嬉しいコメントをありがとうございます、お返事が遅くなりました。私もその動画拝見しました、仲の良さが窺える話しぶりで素敵でしたね。少しお時間頂くかとは思いますがお待ち頂けますと幸いです。リクエストありがとうございます、また読みに来て頂けると嬉しいです。 (2023年1月9日 14時) (レス) id: 4b185b5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：竜胆 | 作成日時：2022年7月8日 8時
