Columbine. (ページ21)

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「碧海！」

明け方。姉ちゃんや翔也に合わせる顔がなくて、わざとこの時間を選んだのに。玄関を開けた途端にリビングから走り出てきた姉ちゃんは、心なしかやつれているように見えた。

「…ただいま。」
「どこ行ってたんよ、あほ。」
「うん。ごめん。」
「翔也もおるから、おいでや。」

言われた通りリビングに入ると、立ち上がって俺を待つ翔也が申し訳なさそうに手を上げた。それに応えて、俺は2人を前に深呼吸をする。

「ふたりとも、ごめんな。」

誰も悪くない、Aちゃんはそう言った。結局は自分で選んだことなんだと。俺が選んだ手段は突飛で、馬鹿げていて、たくさんの人を傷つけてしまった。だとしても、これから、それを償う時間はたくさんあるはずだから。

「姉ちゃん。」
「…うん。」
「俺、大人やから。ひとりでも大丈夫やで。」
「う、ん。せやな。心配し過ぎてたんかもな。」

姉ちゃんは、安心したように肩の力を抜く。目いっぱいに溜まった涙が溢れないように上を向くその姿に、俺は笑った。

「翔也も、…変なことに巻き込んでごめん。」
「僕こそ、碧海を利用してごめん。」
「姉ちゃんのこと、よろしくお願いします。」
「…こちらこそ、よろしくお願いします。」

2人で頭を下げて、その光景に笑って。こんなことで全てが帳消しだなんて思わないけど、それでもどん底からは抜け出せた気がして嬉しかった。

「Aさんには言ったん？全部。」
「うん。昨日、Aちゃんの家で話したで。」

普通に姉ちゃんへ返したその言葉に驚いた翔也が、目をパチパチさせながら俺を見た。

「碧海、やっぱり本気なんじゃない？」

利用するために近付いた。今までの行動や言動が、嘘だったことには変わりない。それでも彼女の優しさに触れて、正直、心地よいと思ってしまったことは確か。

だからこそ、虫が良すぎるって。
そんな自分が、彼女を好きになっていいはずがない。

「ないよ。」

それに、今は向けるべき気持ちはそこじゃない。

「翔也、お願いがあんねんけど。」
「ん？なに？」
「景瑚くんの連絡先、教えて欲しい。」

もし、本当に俺のせいじゃないとしても。
彼女が傷付いたままでは終われないから。このままじゃ、みんなが幸せにはなれない。

「いいけど…その前に、ちょっと聞いて欲しい。」

だからこそ、景瑚くんに全て話そう。
そう思ったのに、翔也から語られた事実に、俺は耳を疑った。

「景瑚くんとAさん、誰かに嵌められたと思う。」

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