Columbine. (ページ3)

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「姉ちゃん、ポテチ食う？」
「あんた毎日買ってるん？もったいな。」
「ええやん、美味いでこれ。」

家に帰って、買ってきたばかりのお菓子とジュースの入ったコンビニ袋をテーブルに置いて笑う。
ソファに座る姉ちゃんの横に座ると、彼女は文句を言いながらもテレビに視線を向けたままお菓子の袋に手を伸ばす。

「毎日同じコンビニ行ってるん？」
「せやで。もう覚えられてるからな、俺。」
「そらそやろな。」

ハハっと笑った姉ちゃんの横顔。我が姉ながら、遺伝子ってすごいなと思う。可愛いし、優しいし、面白いし。シスコンなのは認めるけど、本当に奇跡のような姉だ。

「姉ちゃん、最近どうなん。」
「最近？別に普通やで。」
「ふぅん。…彼氏とか出来んの？」
「彼氏なぁ…いらんな。どうせフラれるしな。」

一気に切なくなる顔に、俺の胸はキュッと締め付けられる。
数年前の姉は、毎日幸せそうに笑っていたのに。いつからか、そんな顔も見なくなった。

いつからか、なんて。本当は全部知ってるけど。

「碧海こそ、彼女出来たん？」
「俺も出来ん。欲しいけどな。」

姉ちゃんの問いかけに、あの店員さんの顔が浮かぶ。

"俺のこと、覚えてませんか。"
俺の問いに、真っ当な答えを返した彼女。あの感じは全然とぼけてなんていなくて、本当に俺を覚えていない感じだった。

当たり前。だって俺が一方的に彼女を知っていて、声をかけただけだから。

「そろそろ寝るわ。」
「んー。おやすみ。」

自分の部屋へ戻っていく姉ちゃんに適当な返事を返して、俺は買ってきたばかりの少年誌をペラペラと開きながら考える。

"ジャンプ、いいんですか。"

別に読む気はない。今までも、これからも。読んだことなんて一度もない。ただ俺を覚えてもらうために買っていただけで、思惑通り彼女は俺を覚えてくれた。

「こんくらいの出費なら安いもんやな〜。」

広くなったソファに寝転んで、俺はそのまま目を閉じる。

"碧海、姉ちゃんに優しくないとダメだぞ〜。"
"そんなこと言うて、自分も優しくないやん。"
"俺は優しい！姉ちゃんのこと一番大事にしてんだよ。"
"へ〜。ほな、死ぬまで姉ちゃんのことお願いしますね。"
"心配ないよ、そのつもりだから。よし、ゲームしようぜ！"

約束なんて、守らなくてもいいんだって。
姉ちゃんを泣かせて、絶望させて、突き放したあの人を、俺は許せる日が来るのだろうか。

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