0004 friend ページ4
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入学から一か月経っても、幼馴染みである私たちに距離が生まれる理由にはならなかった。
ただ一つ変わったことは、Aはバスケ部に入って、純喜はサッカー部で次期キャプテンが決まったこと。それによって私と景瑚はふたりで居ることが増えた。
Aに手を振って校舎を出ると、景瑚はすぐに振り返った。窓からこちらを見て手を振るAに、またこれでもかと言うほど手を振っている。
バカみたい。
「景瑚さ、」
「あ、クレープ行く？」
「…行く。」
私が景瑚に送る視線と同じくらい、景瑚はAに視線を送る。気付くな、知るな、何も勘付くなと言われても、気づいてしまった。聞くタイミングなんて、いくらでもあるのに。答えを聞くのが怖い私は、幼馴染みという関係に甘えている。
「景瑚じゃん。」
「瑠姫くん！」
クレープを買って店を出ると、私たちと同じ制服、純喜と同じ色のネクタイをした"瑠姫くん"とやらが景瑚に声をかけた。
「はるかちゃん、だよね？景瑚は純喜の紹介で仲良くなったの。よろしくね。」
微笑みを返して、私は目を逸らす。
「瑠姫くんもクレープ？」
「俺は下見。デート誘いたい子がいて。」
「え、うそ！誰！」
興味があるのかないのか、景瑚はクレープを頬張りながら目を見開く。大して興味もない私は、椅子に座ってクレープの上に乗ったイチゴを摘んだ。
「Aちゃん。明日、部活ないみたいだからさ。」
はにかんだ王子。そして、驚いた景瑚の顔。
「瑠姫せんぱい、Aが好きなんですか？」
"はるかも可愛いじゃん、性格が悪いだけで。"
景瑚の言葉は、嘘じゃないね。私って、いつからこんなに性格が悪かったんだろう。
「好き、って言うか。気になる？的なね。」
いつまでも4人一緒に、なんて。そんなことを祈って、願って、信じていられる年齢じゃないんだよ。
大切なものは手に入れたい。
誰かに取られそうなら、取られないようにしなきゃいけない。
そんなの、当たり前なのにね。
「私、協力しますよ。」
「え、ほんと？いいの？」
「じゃあLINE教えてくれます？」
「もちろん。心強いなー、頑張るしかないね俺。」
「景瑚も応援してあげなよ。」
LINEを交換しながら振り返ると、クレープの生クリームが長い指先に垂れているのも気にせず立ち尽くす彼。
「…ごめん、俺、用事！思い出したわ。」
焦ればいい。
それで、諦めたらいい。
「瑠姫先輩。私のお願いも、聞いてもらえます？」
to be continued....
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作者名：マツ子 | 作成日時：2022年10月1日 1時
