0021 keigo ページ21
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「Aって意外とゲーム上手いよな〜。」
「昔っから景瑚と純喜に鍛えられたからね〜」
瑠姫くんの家から帰る途中、テレビゲームで全敗したことを嘆きながら、天を仰いで隣のAに悪徳をつく。彼女は笑いながら俺の肩を叩いて、慰めるように優しい口調で答えた。
でも、俺には分かる。
Aは何か、俺に隠してる。
「ねーえっ」
Aの少し前まで走って、不意に振り返ってその顔を覗き込む。パチパチと瞬きを繰り返したAが、すぐに俺から目を逸らした。
「試合でなんかあった？」
「…んー？」
「景瑚くんにはバレバレですよ〜」
誤魔化そうとする彼女の頭に手を置いて、その髪をわしゃわしゃと撫でる。Aは観念したようにため息をついて、俺を置いて歩き始める。
「はるか、景瑚のこと好きだったんだね。」
「しかも純喜のこと好きじゃないのに付き合ったって。」
昨日はるかが言っていたこと。恐らく今日話すだろうと思っていたし、そのせいでAが渋い顔をしていたのは想定の範囲内。
やっぱり、許せないのかもしれない。Aの胸の内を確かめずにはいられなくて、もう一度Aの横に並んだ俺は途切れないように会話を続ける。
「怒ってるの？A。」
「怒ってないけど、もっと早く知りたかった。」
「言いにくかったのかもしれないよ？」
Aは立ち止まって、ふん、と鼻から息を吐いて俺を見る。その視線は睨んでいるのに、顔は可愛いままだからずるい。
「景瑚も私に隠してることあるでしょ。」
「え、俺？？」
「そ、景瑚。私、景瑚が好きだった人のこと知らない！」
ギクっ、なんて。本当に思うことがあるんだと感じるほど、俺は動揺した。確かにAは今純喜くん、はるか、2人の気持ちを知った。残すは、俺だけ。
「俺は…もう終わったことだし？」
「終わってても知りたい。みんな知ってるんじゃないの？」
「ん〜、まあ…どうかなぁ…」
「誤魔化す時の癖、出てるよ。」
鼻を触る俺の手を掴んだAは、相変わらず可愛い顔で俺をじっと見る。ほら、言いなさい、と捲し立てられるから、俺も戸惑いながらため息を吐く。
「優しくて、可愛い。周りの人を大切にして、誰も傷つけない人。」
「…それってみんなそうじゃないの？」
あー、Aって鈍感なんだった。
「そんな人、Aしかいないと思うけど」
気づいた時には、もう遅い。
隠していくつもりだった気持ちが、溢れてしまった。
to be continued....
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作者名：マツ子 | 作成日時：2022年10月1日 1時
