0001 you ページ1
.
「A！」
後ろから聞こえた声に、制服のスカートを揺らしながら振り向く。そこに居た彼は坂を猛ダッシュで下るスピードを緩めて、歩いている私の横へ並んだ。
「おはよ。制服、似合うね。」
「あったりまえじゃん。俺だよ？」
「モデルの佐藤さんですもんね？」
「そうそう。って、馬鹿にしとるな！」
景瑚に叩かれた額をわざとらしくさすりながら笑っていると、その後ろからまた大きな声が聞こえた。
「おはよ！」
少し高めで、それでもしつこくない大好きな声。
「はるか、おはよー！可愛い！」
「Aもかわいい！やっぱりブレザーいいよね！」
「一気に大人になった感じしちゃうよね。」
私たちは所謂幼馴染み。家はみんな隣で、保育園、小学校、中学校とずっと一緒。高校も、自然と同じところを選んだ。
「騒がしすぎ。」
小学校の途中で越してきた彼もまた、私たち３人の家の隣だった。学年はひとつ上だけど、当たり前のように仲良くなれた。
「純喜の制服姿、ちゃんと見るの新鮮。」
「１年着てんねんから見てるやろ？」
目を細めて笑った純喜が、いつの間にか隣に並んだ景瑚と自然に肩を組んだ。はるか、景瑚、純喜、私。住宅街の真ん中を4人並んで歩くのは、幾つ年を重ねても嬉しくて、幸せだ。
「流石に3人一緒のクラスって訳にはいかないよね〜」
少しだけ口を尖らせながら言うはるかに、景瑚もまた少し考える。
「運が良ければ俺とはるかは一緒じゃん？だって俺ら頭悪いし」
「ちょっと、景瑚と一緒にしないでくれる？」
些細なことでキャッキャと揉めるふたりのペースが遅れるのは自然なことで、私と純喜は笑ながら少し前を歩く。
「Aはまたモテるやろな、高校いったら。」
「モテるのは純喜でしょ？」
「俺は彼女なんていらんもん。まだまだAたちとおる方が楽しいし。」
「…そ？」
笑いながら答えて、少しだけ俯いた。
"幼馴染み"
そんな関係に、満足していない訳じゃない。誰よりも彼を知って、何よりも大切だと言い切れる今が一番幸せなのはわかってる。
でも
"俺は彼女なんていらんもん。まだまだAたちとおる方が楽しいし。"
その言葉は、必然的に私は彼女になれないと言われているように聞こえてしまう。
いつか、私よりも大切な人が出来てしまう。
いつか、この関係を幸せだと思わなくなってしまう。
いつまでも4人で、このまま変わらないまま。
どうかその願いが叶いますように。
to be continued...
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 264人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マツ子 | 作成日時：2022年10月1日 1時
