昔の話の段 ページ21
Aさんは目を閉じたまま話し出した。
「僕さぁ、君もご存知の通り、人に追われてるんだよね…。」
「それは…知ってますけど。」
俺が戸惑いながら返事をすると、彼女はぽつりぽつりと話し始めた。
「僕、親いないんだよ。」
「それは、僕も一緒です。」
「ん、やっぱりそうなんだ。」
Aさんが薄らと目を開けて横目で俺を見た。
この人、驚かないんだ…。
「やっぱりって…。」
「何となく分かってた。君は僕と同じ匂いがしたからね。」
もしかして、Aさんが俺の事気にかけてくれてるのって…。
「同じ匂い…。」
俺がそう呟くとAさんはまた目を閉じて大きく息を吸う。
「うん。なんか、苦労して育ったんだろうなって。歳の割に世渡りのいろはを分かってるっていうか、ね。」
そうか、この人の態度が心地よく感じるのは、この人の優しさは同情とか、そういう辛くなる優しさじゃないからなんだ。
俺が黙っているとAさんは続けた。
「いやぁ、たまにさ、僕がそれに気づいてストレートに聞いちゃうと傷つく子がいるからさ。きりちゃんは気にしてないんだ？」
「まあ、もう昔のことですし。」
「分かる。昔のことだから諦めつくんだよね。でも、辛くない訳でもない。だって、小さい頃に親が居なくなると、色々と辛い事あるからね。」
この人、本当によく分かってるな。
「そうっすね。」
「まあそれは置いといて、僕の親は安否不明だけど、僕がここに居るのは母のおかげ。母に、僕の父の縁で頼れる人が南にいるからって言われてさ。忍術学園を探せって。」
そこまで言うとAさんは笑った。
「無理だよね〜。だって、忍術学園って外部にはただの学校っていう亭でやってるし。こんな山奥の学校、街の人は知らないしね。とりあえず京の都に着いたはいいけど…みたいな。」
「確かに…。よく辿り着きましたね。」
Aさんは目を開けてこちらに顔を向けると、白い歯を見せて笑った。
「6年もかかっちゃったけどね。」
「6年…。」
「うん。そもそも、京の都まで行くのも、母から貰ったお金との兼ね合いもあって1年以上かけちゃった。お金を稼ぐために、1年くらい、機織りの仕事したんだ。」
「機織りっすか…？」
「幼子に力仕事は出来ないからね。」
Aさんが当時を思い出すように空に目を向ける。
「大変だったよ。そこから京都に来て…。」
Aさんはそこまで言うと、少し黙り込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
駿河 - はるき (2023年2月21日 10時) (
レス) @page2 id: d099db8a14 (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんのご友人のご友人 - 更新待機 面白かったです三c⌒っ.ω.)っ ｼｭｰｯ (2023年2月3日 23時) (レス) @page34 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんですよ〜☆ - 小松田 女主てぇてぇ眺めておきたい、更新できたら、お願いします！(^^ω) (2023年1月24日 12時) (レス) @page34 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
莉ぃ兎 - はい！三次元のリア充は爆発させたくなりますwww私は腐ってますww多分。←ゆりなです。 (2019年4月29日 17時) (レス) id: 8f6b5d85cc (このIDを非表示/違反報告)
冷奴(プロフ) - ゆりなさん» 私は男女のリア充は爆発させたくなりますねwかと言って腐ってるわけでも無いのですが。多分w (2019年4月28日 11時) (レス) id: 97749a7a82 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷奴 | 作成日時：2019年1月12日 17時
