い ち ず 。III【松田陣平】

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「スリよー！

スリがいるわよー！！」



そんな時、人混みの中から一人の女性が駆けてきた。

先程の発言からするに、スリから逃げる為なのか後ろを見ながら走ってきたその女性は、ジョディさんにぶつかって尻もちをついてしまった。



「いたたたたた……」



ｼﾞｮ「大丈夫ですか？」



歩「大丈夫？おばさん…！」



もう話が終わる頃だと哀ちゃんが予想したのか、いつの間にか子ども達も近くまで来ていた。

ジョディさんが手をさしのべ、歩美ちゃんがもう片方の女性の腕を支えて立ち上がらせてあげていた。



「えぇ…

さっき私の鞄に手を入れている人がいて慌てちゃって…」



「確かにこういう人混みはスリが多いですからねぇ」



男がそう女性に話掛けると、女性はその男の顔を見て驚いたように顔を一変させた。

一言で言えば挙動不審。



「え、えぇ…ほんと、そうですねぇ……

気を付けないといけないですよねぇ〜…？」



これは明らかに焦っている。

そしてその女性は「そ、それじゃあ失礼しますー！」と不自然な別れ方をしてまた人混みへ走っていった。



貴「……」



あの人、もしかしてスリだったのでは…？

「スリがいる」とわざと騒ぎを起こし、それを聞いた人達は自分の財布を確認する。誰がどこに財布をどこにしまっているかなんてその一言で分かってしまう、スリの常套手段だ。

そう思った時には既に遅く、追おうと目を向けるがもうあの女性はいなくなっていた。



ｼﾞｮ「何だったのかしら、あの人…」



貴「……さぁ、何だったんでしょうね〜」



胸ポケットに入っている自分の財布を取り出し、中身の紛失が無いか確認しながらそう言った。

この時のコナンくんの目が冷たかったのはきっと気のせい。



ｼﾞｮ「あら、A何か買うの？」



貴「あー、喉乾いたなーって」



コ「(おいおい…)」



ｼﾞｮ「ならあっちに自動販売機あったわよ」



貴「ありがとうございます」



ジョディさんが指さした方に向かい、じゃあ買ってきますね、と小走り気味にその場を去った。

……後ろから複数の目線が刺さっているのは気のせいではなさそうだ。

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