翔ける＿HE【的場静司】 (ページ10)

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第六十話ページ10

Aside

多「Aちゃんは、付き合うとか、別れるとか知らないってこと？！」

付き合う？別れる？
首を横に降る。言葉は知ってるけど、多軌の使ってる意味は知らない

多「そっか！そういうことかぁ……(も、物凄い純粋なんだ……Aちゃんって…)」

「ご、ごめんなんか」

多軌は困ったように腕を組み、う～んと唸っている

多「ううん。いいよ。ただ説明するの難しいし…そうだ！このあと、家に来てよ！Aちゃんにいいもの見せるね！」

「へ？」

多「じゃ、そういうことで！放課後、下駄箱集合ね！」

そして多軌はバタバタと図書室を出ていった。
(放課後…下駄箱集合…)
急に決めたけど、多軌のおうちの人は大丈夫なのかな。いきなり行っても。それに誰かの家に行くなんてはじめてで、どうすればいいかわからない

(夏目に聞こう……)
と思ったけど、やっぱりやめた。何となく。避けるわけではないけれど。田沼に聞いてみることにした。

「田沼！」

クラスは昼休憩だから賑わっていて声が届かない。ただ私に気づいた人たちがチラチラと私を見始めて、ざわめき始める

でも、田沼には声が届いてないのか、気づいていないようだ。
仕方なく皆に見られながら田沼のもとへと歩いていく

田「あれ、東明？」
「うん。」
田「どうしたんだ？あ、北本か？」

ようやく私に気づいた田沼は北本を呼ぼうとするが、それを止める。

「違うよ、田沼に少し聞きたいことがあるんだ」
田「？」

＿＿＿＿＿＿＿＿

放課後になり、下駄箱まで田沼と一緒に多軌を待つ。

田「遅いな、多軌」

昼休憩のとき、田沼に一通りのことは教えてもらったが、多軌の家に行く理由を話すと、謎についていきたいと行ってきたから、一緒に行くことになった

田沼と下駄箱でしばらく待っていると

多「ごめんね、遅れた！ってあれ？田沼くん？」
田「ごめん。おれもいっていいか？」
多「いいよ！多い方が良いしね。よし、行こうか！」
「うん、楽しみ」

他人の家に行くのは始めてだから少しドキドキしている。家に入るときは“お邪魔します”を言って、お家の人には挨拶をする。
(よし、完璧……多軌のお母さんってどんな人なんだろう)
やっぱり、似ているかな

(私のお母さんって、どんな人だったっけ…)

私は“忘れろ”と赫良に言われて以来、あまり思い出すこともなかったし、夢に出てくることはなかったから。
思い出そうと記憶を遡ろうとするけど、思い出せない。
罵声ばかりで、顔を何も思い出せない。お父さんだって、きっと、いたはずなのに…お父さんは、声すら思いだせない

「…………」