第八十九話 ページ39
Aside
獣はようやく壺に全て収まり、蓋を閉じる。隣を見ると名取さんが笑っていた。
「何点、ですか？」
名「うん、満点だね」
「やった！」
その答えを聞いて跳び跳ねる！
名「じゃあご褒美として、何か買って帰ろうか」
そう言って、優しい目をして、頭を撫でてくれる名取さん。
あのとき、頑張って覚えだた甲斐があった。この知識があれば、何とかなるかもしれない。夏目を助けるぐらいなら……
その時背後から、聞き覚えのある声が響いた
的「お見事でした」
「「!」」
その声の主は、振り向かなくても、分かる。分かってしまった
私より一足先に後ろを振り返った名取さんは咄嗟に私を背中に隠す。
ﾄﾞｸﾝ
この声は、紛れもなく、的場さんのものだ＿
(何故？)
名「何してるんですか？こんな所で」
名取さんが強く言葉を掛ける
七「それはこちらの台詞だと思うんだけどねぇ？名取。その獣はうちも狙ってたの、知ってただろう？」
名取さんの背中から少しだけ顔を覗かせ、様子をうかがう。いつものように、着物姿で不適な笑みを浮かべている的場さんと、その傍らには七瀬さん
七「それになんだい、嬢ちゃんを背中に隠したりなんかして」
名「できるだけ関わらせたくないんです。何のようですか？」
何故か睨み合っている二人。前々から特別仲が良いようには見えなかったけど、悪いわけでもないと思っていたのに……
すると今度は的場さんが口を開く
的「うちが横取りしてもよかったんですが、Aさんの力を見たくてね。止めたんですよ」
名「それで。何のようですか」
無駄口を叩くなとでもいいたげに強めに話を促す名取さん。
(いつもと違う……？)
的「君が持ってるその壺をください。使えるかもしれないので。
お金はもちろん、倍の額を貴女達に、差し上げましょう」
私の持っている壺を＿＿＿＿
その言葉を聞いて、壺を握るてに力がこもる
何故だか分からないけどこの人達には渡したくないと思った。妖のことを道具のように思っている彼らには。
こんなことしたところで私はどうせこの獣と引き換えに多額の賞金をもらうと言うのに
情が沸いた……のとは少し違う
こんなの偽善だ…分かってる
今更かわいそうに思えてきたのか、私は。なら最初から封じるな。
私は、壺を差し出す。
“ごめん”と心の中で謝りながら
的「有難う御座います。後日振り込ませていただきますね」
壺をにてしても尚表情は変えず、冷たい笑みを浮かべているだけ
的「使えるものは、使わないと。ですよ。………あぁ、Aさん、いつかゆっくり話をしましょう」
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作者名：穴 | 作成日時：2020年8月25日 19時
