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第八十八話 ページ38

名取side

名「ごめんって……いいと思ったよ?ちゃんと」

割りと真剣なトーンでそう言ってみるが、Aちゃんはくるりとこちらを振り返り、頬を膨らませたままだ。まだ、面白がっていると思っているのかもしれない

「本当に思ってます?」

名「思ってるよ。Aちゃんは賢いね。……でも、それだと術に引っ掛かったか見張っとかなきゃいけないよ?」

「紙人形を飛ばして興味を引けばいい」

名「なるほど。ちゃんとこれまで習ったことが使えるね。

……よし、じゃあはとりあえず今日は準備をしようか。それで明日またここにこよう。神を書くのも明日だ」

「はい!」


さっきの拗ねた顔はどこへやら。勢いよく返事をすると、少し前を歩いたまま山を下り始める



その時。

ガサッ

名「……?!」


今、何か……



「名取さん?ここ、蚊がいっぱいなので早く出たいです!」

後ろの茂みで何かが動いた気がしたが、Aちゃんに急かされ、走って追い付く。

名「ごめん。帰ろうか」



??「いかがなさいます?横取りですかね?」
??「いや、しばらく見ておきましょう」

??「面白そうだ」


_________________


「じゃあ私、陣書いてきますね!」

円を書く周辺の石ころを払って、陣を大きく書いていく。幸いにも書いている最中に獣に出くわすことはなかった

名「書けたかい?」
「はい」

後は自分の足元にも、封じるための陣を書いて、壺も用意し、準備は完了した

名「じゃあ始めようか。私が紙人形でおびき寄せるから、術は頼んだよ」

そう言うと、名取さんは紙を飛ばす。

暫くして、あたりが騒がしくなる

なにか、ざわめくものがある。
鳥達がとびたち、木々が揺れ、明らかに。“何かが来る”とわかる

そして______


名「来るよ」

ズシンッズシンッと地響きが次第に大きくなり、木々の中からその獣がとひだしてきた__!!

「っ!」

そしてそのままこちらに向かって一目散に走ってくる。体長は3m程あると思われるその獣はものすごい迫力で紙を追いかけ私たちを踏み潰さんとばかりの勢いで走ってくる。が_

獣《ぎゃん!!!》

陣にかかり、術が発動し、身動きできないように地面に縛り付けられていく

「ごめんな」

縛られながらも苦しそうに暴れるその獣の妖に小さくそう言うと、パンとてをあわせ、術を唱える

「古土に御座す 影ならぬ者
これを掴むは是 示されよ」

そう唱え、壺をつきだす

名「さぁ、来るぞ…」

陣から黒い無数の手が出て、獣をとらえ、しゅるしゅると壺の中へ導いていく

そして___

名「…成功だね」

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作者名: | 作成日時:2020年8月25日 19時

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