第八十四話 ページ34
Aside
名「ごめん。おれが目を離した隙に……」
マンションに着いて名取さんが謝ってくる。前もそうだった
「結局探してきてくれたなら、それだけで充分ですよ!」
何だか暗い雰囲気になってしまっているのが嫌で、明るくそう返す。
名「本当。ごめん。何もなかった?」
「…はい」
私自身、何か悪くいわれたわけ、ではない。
ただ、最後のあれは。
あの時の、あの顔は。
(あんな風に、優しく笑うんだ……)
いつものあの薄っぺらい笑みなんかじゃなくて、なんていうか……
綺麗だなって、思ってしまった。
(的場さんも、あんな顔が、できるんだ)
的場さんの、優しい顔を、初めて見た。
名「__Aちゃん?」
「へ?」
名「聞いてた?今の話 」
しまった!全く話を聞いていなかった。
こういうときは素直に聞き返した方がいい。
「ごめんなさい。聞いてませんでしたっ」
やっぱりね。と名取さんは呆れている
名「今日の会合で聞いた仕事の話なんだけど__」
______________
名取side
名「七瀬…さん」
七「なんだい、化け物でも見たような顔して」
(何故、ここに名取さんが?)
背中を冷や汗が伝う。
嫌な予感がするぞこれは…
名「今日は的場一門は欠席なのでは?」
素直に疑問に思ったことを口にする。そう、確かに自分はそう聞いた。他人から聞いたから間違った情報だったのか?
七「何言ってるんだい。今回は違うよ。前回がそうだったじゃないか」
名「じゃあ何故今回は_」
七「ちょっとした野暮用さ。遅刻しただけだってのに。それを誰かが大きく言ったんだろうさ」
(遅刻……)
ということは、七瀬さんが来てるならもちろんアイツも__
七「そういえば、今日はあの嬢ちゃんは居ないのかい?」
名「はい、こんなところは子供には危険でしょう」
にこりと笑って返す。
そうだ。確かに危険だ。なのにおれは連れてきてしまった。
もしかしたら今頃誰かが彼女と接触しているかもしれない。最悪的場が_
こんなところに来ていると知ったら、今度こそ彼女を一門に引きずり込もうとするだろう。
七「的場もお気に入りでねぇ。もたもたしてると、他の男に持ってかれちまうよ」
名「!……彼女はそういうんじゃないんですよ」
七「おや違うのかい?あぁじゃあ狙ってるのかい?」
七瀬さんがいやらしく笑う。
(この人こういう話好きなのかよ…)
名「違います。保護者です。この話、もう終わりでいいですか?」
七「つまんない奴め……そうそう__」
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作者名:穴 | 作成日時:2020年8月25日 19時