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第八十二話 ページ32

Aside

的「いえ?ありますよ。奥さまの体調不良で焦る気持ちはよくよく分かるが、この者は的場のものですので。

手を引いてもらう」

帛「ふん。たまたま妖力が強く似ていただけだ。他を探す」

的「そうしてもらえると有り難いです」

淡々と進む会話。
的場さんは笑っているけど、目は笑っていない。

一方の帛正は吐き捨てるようにそういうと、戻っていった。
“似ていた”という言葉に少しだけ引っ掛かる。

去っていく帛正を見ていた的場さんが、今度はこちらを向いた。

的「立てますか?……あぁ、手首に痕ができてる……」

そう言って手を差し出してくれたが、借りることなく立ち上がる。

「助けてくれて、有り難う御座いました。今の人は……?」

的「あぁ、あれは朱雀家の現当主、帛正です。あれは的場一門の中で的場に次ぐ権力者ですよ。

奥様の美和子様と共に祓い屋なのですが、体調がよく思われない。朱雀家には跡取りが居ないのでね。

詳しい事情は知らないが、それで焦ったんでしょう。そして偶然、Aさんを見つけた。」

的場さんの瞳が、私をとらえる。
やっぱり綺麗だなぁ…なんて…

「で、でも息子さんやお孫さんが居るんじゃないんですか?」

明らかにお爺ちゃんだし、居てもおかしくないと思うけど…

的「えぇ、いらっしゃいますが、見えないらしい。見えるものが跡取りとして居ないからには廃業する他ありませんので」

「なるほど…」

確かに、そんな感じのことは、名取さんからも聞いた。

そこでハッとした
(私、名取さんと来ているんだった…!!!)

助けてもらったのに少し失礼かもしれないけど、“あまりか関わりすぎるな”といわれていたのを思いだす

「…さっきは、本当に有り難う御座いました。私、帰りますから__」

助けてもらったお礼をして、急いで名取さんを探しにいこうとしたが、今度は的場さんに手を捕まれる

「!!」
的「会合は来る癖して、祓い屋にはならないんですね」

まだ話は終わっていないといわんばかりに笑顔の圧がかけられる

「……妖とのつきあい方を学んでいるだけですっ。祓い屋になるつもりは、ないんです」

キッパリそう言ってその手を振りほどこうとするけど、グッと力を込められ、両手でほどこうとするけど簡単にはほどけない。

「離してください」

的「一門に入るといい。私が教えてあげられる」

そう言って笑いかけてくるが未だ手はしっかりつかんだままだ

確かに一門に入れば___

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作者名: | 作成日時:2020年8月25日 19時

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