第七十七話 ページ27
Aside
名「ごめんね…遅くなった」
名取さんはそう言って、謝る。
でもはっきり言って名取さんの謝る必要なんて、どこにもないのに……なぜ？
それに、名取さんが私の手を引いて先を歩いているから顔は見えないが、どこか怒っているようにも感じる
「すみません…」
自分もまさか、あそこまで知られているとは思ってもみなかった。
それに、あれっきりだと思ってた…
名「気を付けて、ね…」
「…はい……でも、なんで私を一門に？」
名取さんも祓い屋だから、分かることがあるかもしれない。
名「…的場一門って言うのはね、遠いむかし、村人達を襲い来る妖へと的場の先祖が弓をひいたのが始まりなんだ……
祓い屋業界は衰退していっているし、見えている人間は貴重なんだ…君みたいに、力の強い子なら尚更ね…」
「それって……これからも…？」
名「だと思うよ。だから……お願いだから…気を付けて……」
「……はい…？」
何だか今日は、名取さんの様子が変だ。元気がない、というか……朝まではそんな事なかったのに…
何だか暗い感じになってしまって、何か話を…と思ったときに、どうしてあの場所が分かったのかという疑問が浮かんだ
「どうしてあの場所が分かったんですか？」
名「簡単さ……紙人形を飛ばしたんだ…ほら、前に教えたやつ」
「なるほど！」
私も夏休みのはじめの一週間に依島さんの家で泊まり込みしていたときに紙人形の飛ばしかたを教えてもらった。
簡単で扱いやすく、とても便利だって名取さんがいってたっけ…
名「……Aちゃん、帰ったら、少しいいかな…」
「？………」
名「えっとね…おれが話すというより、君が話すことになるんだけど…」
「はい…」
家に帰って二人してソファに座って並ぶと、名取さんは真剣な顔つきでそう言ってくる。その空気に、私も、真剣な態度で応える
名「さっき…的場さんとの話を聞いてたんだ…ごめん、盗み聞きしてた」
「え＿＿」
それは、どこから、何処まで？＿＿
ﾄﾞｸﾝ
心臓が高鳴る。
名取さんの指す“的場さんとの話”って、最初から最後まで？それとも、途中から＿？あの話も、聞かれていた＿＿？
名「Aちゃんの、過去を教えてほしい……出鱈目って、どういうこと……？」
名取さんが、真っ直ぐ私の瞳をみつめてくる。
(出鱈目ってことは……聞かれ、ちゃってたんだ……私が、名取さん達の将来を壊すかもしれないって……)
でも名取さんは私を責めるような様子はない。
名「言いたくなかったら、良いから。」
「…そこまで面白い話じゃないですよ？」
＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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作者名：穴 | 作成日時：2020年8月25日 19時
