第七十三話 ページ23
夏目side
夏「ならおれは__」
「_あ。ちょっと待って、今何時?」
おれのこぼれそうになった言葉は、Aによって遮られた
腕時計を見ると、もう17時を過ぎていた
夏「17時」
「ほんと?じゃあそろそろ私帰るね!」
夏「あ、あぁ…」
「あ、ごめん、何か話途中だったけど、大丈夫?」
夏「大丈夫。気にしなくていいよ」
「そっか、帰るって名取さんに言ってあるから、じゃあまた学校で!」
夏「分かった…また学校で」
結局、そこまで出てきていた言葉は、口から紡がれることはなく、とどまったままとなってしまった。
Aがじゃあねと手を振り、
先を走っていく。
かと思うと、すぐ戻ってきて、こう言った
「夏目がまた私の名前を呼んでくれたから、嬉しかったよ」
つい朝まで、彼女の笑顔を見て、幸せを感じていたのに、今は何故だか、辛くなる。胸がいたくなって。苦しい。でも、どうしようもなく、締め付けられる
進んでいくA。
おれは、止まったまましゃがみこんだ。
勉強、頑張れだとか、何か声をかけてやればよかった。
Aの傷ついた顔が、嫌いなのも。
笑った顔に、胸が締め付けられるのも。
一緒にいたいと思うのも。
全てに理由があったんだ
Aが、好きだからだ____
ずっとモヤモヤしていたものが、溶けていくようだった。今更、気づいた
でも彼女はもう、手が届かない。
とても遠い____
夏「いつから、好きだったんだろう」
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作者名:穴 | 作成日時:2020年8月25日 19時