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第五十三話 ページ3

夏目side



その日、Aは藤原家を出ていった


聞いたところによると、名取さんのもとに住まわせてもらうそうだ。あの何もない広い空間に、彼女一人で、大丈夫だろうか。
もう、おれが気にすることじゃないけど。あの細い体じゃ、いつか折れてしまうよ。きっと、そんなこと、名取さんがいるし、心配する必要もないんだろうけど。

Aは、おれが思ってるよりも、ずっとずっと、強いから。


先生は、何も言わなかった。

ずっとおれの側にいた

__________

Aside

名「本当に、よかったのかい?」

車に乗り込んだあとに名取さんが心配そうに聞いてくるものだから、ついつい笑ってしまった

「今更ですか?ふふ……」

名「今なら戻れるかもしれないよ?」

「戻りませんよ。そんな中途半端じゃダメでしょう」

「……………夏目、大丈夫ですかね」

ふと思い浮かんだのは、夏目のこと。先生に託しておいた。先生、あの時私と名取さんの会話、聞いてたんだって。だから知ってたんだって……
必ず帰ってくるから、それまで夏目をよろしく。って頼んだら、先生に怒られたんだ。“用心棒なのだから当たり前だ!”ってね


でも、夏目のあの時の表情は__

名「置いていった君が言うのかい?」

「それも、そうですよね……」

こうなることを、望んだのは私だ


今になってきづく。
夏目のことを思っているようで思ってない、上っ面だけの優しさと、夏目の気持ちを考えているようで、勝手に押し付けている、自分勝手な私。

現に私は、直前まで夏目に話さず、塔子さん達だけに話した。その上夏目の気持ちを知ろうとすることなく一方的に。
とても卑怯だ__



名取さんの部屋は、いかにもなマンションの一室。だいぶん広い。これ、本当に使っていいんだろうか

名「大丈夫。私は使わない時が多いから、自由に使ってくれていいから」

「はい」

名「あ、時々様子見に来るから。ベッドは私の使ってくれていいからね。はいこれ、合鍵」

ぽい。とてわたされる鍵。

名「私の祓い屋としての案件がある時は、容赦なく君をつれ回すから、覚悟しておいてよ?実践を重ねた方がより良いから」

「はいっ!」

「明日も学校だろ?」

「はい。この件は、有難うございます!本当に」

そうやってお辞儀をすると、ぽんぽんと頭を撫でられる

名「いいのいいの。じゃあお休み」

そして、扉はしまり、私は一人になった。
(わがままを聞いてもらっからには、頑張らなくては…)

寝ようと思ったけどなんだかベッドは名取さんの匂いがして(いい匂い)恥ずかしくて、ソファで寝ることにした

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作者名: | 作成日時:2020年8月25日 19時

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