第六十一話 ページ11
Aside
「…………」
いつのまに、忘れてしまっていたんだろうか、思い出そうにも、そこから先は、壁で塞がれているように、何も思い出せない。
それより、赫良と、初めて出会った日の事さえも＿＿
「あれ……？」
おかしい
赫良とのことは何だって覚えてる。はずなのに、霞がかってしまっていて、どうしても…どうしても＿＿＿
田「東明？大丈夫か？」
「え？……あぁ、ごめん田沼、何でもない」
気がつくと、多軌の家ノ前で、田沼が心配そうにこちらを覗き込んでいる
田「どうした？…何かいるのか？」
「いや、違う。本当に何でもないんだ」
きっと田沼の言う“何か”は妖のことだ。何かいるから気分が悪いのかと心配してくれているんだと思う。確かに小さな妖はいるようにも思えるけど、どれも悪意があるようには思えないし、多分つまんで外に出せるレベルのものだ
多「ほら、上がって！」
田/東「お邪魔します/おジャマシマす」
(言えた＿＿＿！)
そのまま玄関から上がり、多軌に案内され、和室の一室に案内された。この家は多軌のおじいさんが住んでいたもので、好きだからと、多軌は一人でここに暮らしいているらしい
多「ほら見て？これが、少女漫画ですっ」
そういって、多軌が漫画を何十冊ぐらい、とりだしてきた
田「すごい量だな」
多「でしょう？ほら、Aちゃん！とりあえず読んでみて！」
ずいずいと多軌の勢いに押され、一冊、漫画を手にとって読みはじめる。田沼も隣で、真面目な顔をして読んでいる。
そのまま三人で、漫画の世界へとのめり込んでいった。
＿＿＿＿＿＿＿＿
多「どうだった？」
「な、何か、凄い……初めて知った。」
異性と、手を、繋いだり…き、キスをしたりするのって、すごくドキドキする、らしいってこと。私はまだしたことがないからわからないけど、恥ずかしくなること、らしい。
漫画の中の主人公はそうだった。他にも多軌にいろんなことを教え込まれた。多軌は楽しそうだったけど。
その好きな人とは話せるだけでも嬉しいんだって。一緒に帰ったり、距離が近くなったり、頭を撫でられたり、あと抱き締めてもらったり、その好きな人にしてもらえると、幸せなことらしい
田「東明は、物凄く純粋なんだな。むしろそのままで良かったんじゃないか？」
相違って少し笑う田沼。
多「駄目だよ！少しくらい知ってないと、何されるか分かんないよ！」
「？でも今日はその、おしえてくれてありがとう」
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作者名：穴 | 作成日時：2020年8月25日 19時
