第五十一話 ページ1
夏目side
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何とか的場さんのもとから抜け出したものの。穴に引きずり込まれ、待ち構えていたのは、大妖＿＿
俺を追って、名取さんや先生が来てくれた。その中には、Aも。
女の人が、血をとろうと、妖を作り、攻撃してくるなか、おれは何もできず、ただ名取さんに守られているだけだった。
でも、Aは戦っていた。その姿はきれいで、思わず見とれてしまう程だった
おれも何かできればと、名取さんの封印を手伝ったはずが、結局捕まって喰われてしまいそうになって、Aに助けられた。
彼女は、おれなんかよりも、強くたくましい、綺麗な人だ。こんなままじゃ、何だか嫌だ。
おれが守ってやりたいのに、危険な目に遭わせたくないのに
おれのせいで。
いつだってそうだ。おれは、助けられてばかりだ。先生にも。Aにも。名取さんにも。情けない。
ｸﾞｯと膝の上の拳に、力が入った
側で、Aは眠ったまま、目を覚まさない。もう１日が経つというのに。
名取さんは、“あんな強い妖を祓うには、物凄い妖力と体力を使うから。”と、起きないのは仕方がないって……。分かっているけど、とても怖い
このままだと、Aは何処かに行ってしまいそうで。嫌なんだ。彼女は、おれの手の届かないところにまで行ってしまって＿
もし、そんな日が来たら、どうしてやればいいんだろう。飛んでいってしまう君を、地面に引っ張ればいい？止めればいい？それとも、受け入れて、手放せばいい？
「駄目だ＿＿」
変なことばかり考える。
名「夏目？Aちゃんの具合はどう？」
夏「名取さん……まだ。目が、覚めないんです」
(目が覚めて、Aに、何て言えばいいんだろう。とりあえず、謝って。……そこから……)
病室に入ってきたのは名取さんで。花を一輪持ってきて、差し替えてくれる。
名「夏目…君がそんな暗い顔をしていたら、きっと、Aちゃんは傷つくよ」
夏「じゃ、どうすればいいんですかね…」
名「そんなの決まってるだろ？笑顔だよ、夏目」
夏「笑顔……」
名取さんの言葉は、不思議だ。安心できて、荒んでいた心が、落ち着いてく。
(そうだ……起きたときにおれがこんなじゃ、きっと駄目だ)
名「そうさ。それに謝るのは二番目だよ。まず、感謝を伝えるんだ。いいね？」
そう言って、名取さんは、笑って見せる。
そうだ。きっとそうでなくちゃ＿＿
その日は名取さんと入れ違いで、田沼や北本達がお見舞いに来てくれた。
目が覚めたら、皆でAに休んだ日の授業を、勉強を教えてやろうってさ。
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作者名：穴 | 作成日時：2020年8月25日 19時
