ドリプリ (ページ2)

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金陽2 ページ2

「__金太郎……？」

陽は、名前を言うだけで精一杯だった。
それほど、今この光景が夢のようで、脳がキャパオーバーしているのだ。

ありえないだろう。
さっきまでコートで舞っていた彼が、目の前にいるなんて。

「話すの、久しぶりやな」
「帰ったんとちゃうの？なんで居るん？てかここ居ってええの？」

陽はまだ口を押さえたままだが、先程よりかは理解が追いついてきたのか、彼女自身がしたかった質問を矢継ぎ早にした。

陽とは正反対に、金太郎は落ち着いている。こんな冷静な姿、別れる前なんてそんなしたこともなかったのに。

少しだけ胸が苦しくなった。
__これは、私の知らない彼だ。

「陽のとこに行くんは、前もって決めてたさかい、スタッフさんとかにはもう伝えとる」
「せやったらなんで、なんでここに」

周りの観客がうるさい。
声も、視線も、行動も、すべてが。

「あんな、わいな、陽に言いたいことがあってん」
「なん？」

金太郎は、試合の時とはうってかわって妙に緊張しているようにみえた。

そんな彼を気にかけているのか、うるさかった会場は一気に静かになった。
響いていた体は、まだじんじんと鳴っている。

「わい、世界一になったら、絶対陽に言いたいことあってん」
「おん」
「わいと、いや、俺と」

金太郎の口の動きが、スローモーションに見えた。

「」

一瞬の無音。そして、耳をつんざく程の大歓声。

金太郎が放った言葉が投下されると、グツグツと煮えあがっていたマグマが、ついに大噴火を起こした。

わあああ！きゃー！Ohhhh!! などの様々な歓声が陽の鼓膜を揺らす。

そんなことに影響されずに、沢山出ていたはずの涙は、限界をしらないのか滝のように流れたまま止まらない。

言いたいことは山ほどあるのに、嗚咽で声が出なかった。
嘘や、ほんまに？ほんまに私でええの？嘘やなくて？
後悔せえへん？

ぐるぐるそんなことを考えていると、さっきの金太郎の言葉が、今更反響した。

「わいと、いや、俺と」

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「結婚してください」