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会場を出てもまだ帰るなとしつこかったが
本気で嫌がると渋々引き下がり、
代わりに分家の者に絡みながら車に乗り込んでいく
直毘人を見送り、携帯で新幹線の時間を調べながら街を歩いた
この格好のせいか、何人か声をかけてくる
ほろ酔い気分の一般人を軽くあしらう
ひと際しつこく、
強引に手を引く若いお兄さんにイラついて振り返ると
なぜか地べたに顔をくっつけて
這い蹲っているお兄さんを見下ろして驚く
しばらくすると近づいてくる人の顔が街頭に照らされて
人生で初めて心臓が止まるかと思った
『…っ』
「……。」
また大きくなった背と少し伸びた髪
纏っている空気は一層研ぎ澄まされていて、
強くなったことは聞かなくても分かる
サングラスの向こうの瞳は相変わらず綺麗なのに、
もう私を見る目は以前とは違う
当たり前なことなのに、
それが自分が思っていたよりも辛くて鼻の奥がツンとなった
『…五条君、』
「やめろ。そんな声で、俺の名前を呼ぶな。」
久しぶりに聞いた声は酷く低くて、怖くて、
容赦なく私を責めたててくれる
『…っ、』
「俺を捨てて、暫く見ないと思ったら、今度は禪院のジジイに摺り寄って…、出世に興味でも湧いたんだろ。」
『…。』
「寄って来る男を偉そうに品定めして、お気に入りを弄んでは次に乗り換える。その天与呪縛も、男誑しのあんたにピッタリだな。」
『……、』
「なんか言ってみろよ!」
私が消えてから、
彼はどれくらい深く、長く傷付いたんだろう
どこにもぶつけられない怒りを抑え付けて
自分勝手な私に、振り回され続けていたのかな
もう私を愛していた気持ちは
全部憎しみに変わってしまったみたいで
それを望んでいたのも、
そう仕向けたのも自分なのに
傷付く資格すらもない心が痛くて死にそうになる
『……言わないよ。』
「…っ」
ごめんね五条君、本当に私は君が好きで仕方ないみたい…―
もっと君の怒った顔を見ていたい
きつい言葉を吐く声を聞いていたい
優しさなんて欠片もない言葉を受け止めて
それで君が楽になるなら、
どれだけ心が荒んでもちっとも苦じゃない
『…元気そうで、嬉しいよ。』
「……っ」
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縞(プロフ) - ゆきえもんさん» ご指摘ありがとうございました。修正しておきます。 (2021年1月28日 16時) (レス) id: c197e34fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆきえもん - 33、34に使われている『役不足』は「能力に対して役が不足している」という意味なので『力不足』か造語ではありますが『役者不足』の方が合うと思います(後者は誤用だとツッコまれるかもしれませんが…)。とても好みの作品なのでこれからも応援しています。 (2021年1月27日 23時) (レス) id: eb1315ed8d (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ* - 初コメ失礼いたします。 チューベローズの続編が見たいです。大きくなった恵君との絡みや他のキャラとの絡みが見てみたいです。 (2020年5月17日 19時) (レス) id: cd2ef48f8b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 初コメ失礼します。チューベローズの初恋の続編を見てみたいです!よろしくお願いします。 (2020年5月17日 10時) (レス) id: 2503e394d8 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 初コメ失礼します。しにたがり姫の方も好きで続編を是非見たいのですが、チューベローズの大きくなった恵などを見てみたいです!よろしくお願いします! (2020年5月17日 8時) (レス) id: 58d70e644d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年4月24日 15時