チューベローズの初恋 続【呪術廻戦】

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都会のような新しいビル群と
古き良き、伝統を重んじた建造物が共存している京都の街並み

ここに来るのは
呪霊の餌として殺されかけた19歳の時以来

もう2年以上も経っているなんて信じられないほど
あの時の記憶は鮮明に頭に残っている








『空気おも。』





高専の校門を思わせる
大きな門構えと長い石畳の階段を上っていくたびに
呪いの気配やら結界やらのせいで息が詰まる


酒好きという禅院家の当主への手土産も構え
着物を着た警備の男に声をかける


わざわざ夜に来た甲斐があった

ただでさえ男が多い呪術師の中でも、男尊女卑の鑑のような
御三家の屋敷は、さらに男で溢れかえっている

力だけは無駄にある数名の警備くらいなら
少し媚びて隙だらけの鳩尾を小突けば簡単に中に入ることができた









「…誰だ。」





単純に、一番呪力を強く感じるところに足を運べば
無造作に数本の酒瓶を転がせて
縁側で月を肴に晩酌している男がいた


禪院家現当主、禪院直毘人
一度だけ、何かの集まりで見かけたことのあるが
立派な髭のある横柄な態度が印象的だった気がする








「…なんだ。香のように甘ったるい一級の小娘か。」

『失礼な覚え方ですね。』





「丁度いい。酌をしろ。」

『…。』








一応不法侵入をしてきたのだが、
まったく気にも留めず隣に座るよう呼び付けて
顔より大きい盃を差し出してくる

右手で抱えていた酒の蓋を開け
三分の一ほど注ぐと、少し匂いを嗅いで一気に飲み干し
盛大に下品なゲップを吐き出した







「…安物だな。」

『嘘でしょ。1本5万もしたんだけど…。』







「酒を知らんな。これを飲んでみろ、ほれ。」

『いらん。飲ますな。』







京都で買った老舗そうな酒屋の一番高い酒を安物扱いして
自分の飲んでいた酒を勧めてくる姿は
ただの大酒呑みの酔っぱらいだ


こんな男に、
これから頭を下げるのかと思うと頭が痛くなる







「酒の相手をせんなら用はない。殺されたくなかったら早く出ていけ。」

『…こっちだって、わざわざ酒を贈りに来たわけじゃない。』





「……甚爾の倅の事か？」

『…。』






「そろそろ買い時かと思っていたが、金をせびりに来たか。」






見下すような目と、馬鹿にするような笑み、
仮にも恵は自分と同じ血筋の子どもだというのに
これだから良家は気に入らない








「いくら欲しい。」

『悪いけど、この家にはあげない。』

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