チューベローズの初恋 続【呪術廻戦】

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「まだ悟を愛してるんでしょう？…なら、私に愛されながら、悟を想えばいい。」

『回りくどいな。口説くならもっとストレートに来なよ。』





「じゃあ遠慮なく。」

『…ッ、そういう意味じゃな…―』





視線が唇に向けられたのを感じ
後ろに下がろうとしたがもう遅く、
頭の後ろを押さえられ逃げ場がない

制止する声は唇で塞がれ
固く閉じた口もすぐに入り込まれて息が漏れた









「…どういう意味ですか？」







顔を離すと満足そうに唇を舐め、
とぼけたように首をかしげる夏油君
腕力では敵わないのを良いことに悪びれもせず
まだ顔を近づけようとする







『…っ、 わざわざ自分から五条君の代わりになろうとするな って意味。』





「じゃあ仕切り直します。」

『やめて。』








胸に肘を押し付けて抵抗するとようやく諦め
軽く額に口付けてから離れていく

数歩後ろに下がってポケットに手を入れると
ザンネン、と眉を下げる顔が
無駄に男前でやはり腹が立つ







『せっかくだけど、どっちも遠慮するよ。』

「…フラれましたね。」






彼の恋人になれるのは寧ろ光栄だが、
触れるたびにいちいち五条君がチラつくせいで、
どうせすぐ苦しくなる



夏油君が言ったように、まだ彼を愛してる。
たぶん、付き合っていた1年前よりずっと。


誰と一緒に過ごしても、誰に手を伸ばしても、
頭の中ではあの人を想っていて、勝手に心は抉られていく

彼を傷付けた罰なのだと思えば、
この痛みさえ手放したくないと感じるほど今の私は救いようがない









『今は子守りで忙しいの。ごめんね。』




背中に感じる
すぐそこまで近づいてきた恵の気配に視線を向けると
知らない男を見て怪訝な顔をしながらも駆け寄ってきていた

帰りが遅い私を心配したのか
わざわざ姿を探しに来て
足にしがみついて夏油君を睨みつけている





「例の子ですか？」

『そう。父親そっくりだけど、可愛いでしょ？』




目つきを解すように頬を撫でると
猫のように摺り寄って来る可愛らしい恵に笑みが零れた





「…嫌な記憶が蘇りますけどね。」

『ああ。殺されかけたんだっけ。』







「斬られた胸の傷が痛みます。」

『それは気の毒に。…じゃ、私は今からこの子と買い物に行くから。』







苦い顔をした夏油君に少しだけ同情し、
足にしがみついたままの恵を抱き上げて一緒に手を振ると
恵の頭をポンポンと撫で
律儀に小さくお辞儀して駅の方へ帰っていった

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