36 ページ36
:
切符を買って新幹線に乗り
2人で並んで座りながら今までの事を話した
恵を守るために、禪院家当主と5年の縛りを交わしたこと
恵の術式のこと
姉の津美紀やその母親のこと
黙ったまま手を握って話を聞く五条君は
やっぱりすごく大人になってて少し緊張する
『甚爾さんは、五条君より前に知り合った。すごい強かったでしょ、彼。』
「…うん。殺されかけた。」
『呪術師も敵わないくらい強いくせに、呪力はないから私の匂いには少しも反応しない人だったの。』
「…好きだった？」
握った手に力をこめて
不安そうにこっちを見る五条君
少しでも楽になればと思って腕に凭れかかる
自分でも分からない
もしかしたら、好きだったのかもしれない
でも五条君よりも大事なものはないのだと、
上手く伝えられるか分からないけれど
ゆっくり言葉を吐いた
『…どうだろうね。知り合った頃は前の奥さんを亡くしてて、かなりやつれてた。再婚するって聞いて、もう会うのはやめたから…。』
「僕が殺したんだよ。誰の為でもなく、自分の力に溺れて。」
「…知ってる。」
「あの人を殺した僕が嫌になった？だから黙って居なくなったの？」
『違うよ。黙って消えたのは、もう君の手を振り払えないくらい好きになってたから。行かないでって見つめられたら、もう動けなくなりそうだった。』
「…。」
「確かに甚爾さんが死んだことは悲しかった。でもそれ以上に、君が生きて帰ってきてくれたことが嬉しかったんだよ。自分でも思ってる以上に、五条君が愛おしくなってたみたい。」
「…ずるい言い方。」
そんなことを、そんな顔で言われたら、
あんなに傷付いた心も時間も全部許してしまう
『続きは向こうで話すから、ちょっと寝てもいい？』
「いいよ。」
間にあるひじ掛けを鬱陶しく思いながら
寄りかかる体に腕を回す
高専を辞めてから
今までどんな仕事を1人でしてきたんだろう
会わない内に、また呪力は強くなっているし
特級に推薦されてるのも耳に入っていた
色んなものをこんなに小さな肩で背負って
独りで守りながら
いつも何事もなかったように平気そうに笑ってる
僕が守りたいと思うのは貴女だけなのに
少しも守らせてはくれない
「…優しいね、ほんとに。」
無防備に寝息を立てる愛おしい横顔を指でそっと撫でる
なんで金沢なのかは分からないけど
今はただこの時間が心地いい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 478人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
縞(プロフ) - ゆきえもんさん» ご指摘ありがとうございました。修正しておきます。 (2021年1月28日 16時) (
レス) id: c197e34fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆきえもん - 33､34に使われている『役不足』は「能力に対して役が不足している」という意味なので『力不足』か造語ではありますが『役者不足』の方が合うと思います(後者は誤用だとツッコまれるかもしれませんが…)。とても好みの作品なのでこれからも応援しています。 (2021年1月27日 23時) (レス) id: eb1315ed8d (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ* - 初コメ失礼いたします。 チューベローズの続編が見たいです。大きくなった恵君との絡みや他のキャラとの絡みが見てみたいです。 (2020年5月17日 19時) (レス) id: cd2ef48f8b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 初コメ失礼します。チューベローズの初恋の続編を見てみたいです！よろしくお願いします。 (2020年5月17日 10時) (レス) id: 2503e394d8 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 初コメ失礼します。しにたがり姫の方も好きで続編を是非見たいのですが、チューベローズの大きくなった恵などを見てみたいです！よろしくお願いします！ (2020年5月17日 8時) (レス) id: 58d70e644d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：縞 | 作成日時：2020年4月24日 15時
