チューベローズの初恋【呪術廻戦】 (ページ7)

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以前何度か相手をしたことのある女から連絡が届き
特に用事も相手もいなかったので
誘われるがままホテルの部屋に足を運んだ

最初は乗り気だったが
退屈な話と覚えのある体に1時間もすれば飽きてしまい
早々に切り上げてシャワーを浴び部屋を出た

「…？」

廊下に出てみるとまたあの甘い匂いがした
昼間よりも強く濃く、鼻の奥に残る

きつい香水は嫌いだがこれはそういう類じゃない

誘われるように匂いの元を辿っていくと
すぐそこの角を曲がる人影が見え
しつこく絡んでくる女の手を払って後を追った

全身を黒い服で纏い携帯を弄る後ろ姿は
近づくほどに思わず触れてみたくなる

「ねえ…、」

『？』

声をかけると一瞬驚いてこちらに振り返る
俺の制服のボタンを見て面倒そうな顔をしているということは
昼間学校で見かけた”香月先輩”で間違いないのだろう

散々ブスに違いないと話のネタにしていたが
硝子の言うとおり確かに美人だ

首元には赤い跡がいくつか覗き見える
こんな時間にここで会うということは
さっきまで誰かと一緒だったのだろう

今日見かけただけの気にも留めていなかった先輩の
顔だけでなく
知ってはいけないものまで見てしまったようで
妙にもやもやした不思議な気持ちになる

「香月先輩？」

『…どっかで会った？』

「今日、夜蛾先生と話してたろ？」

『…ごめんね、見覚えないや。』

媚びも愛想も感じない
うっすら煩わしささえ感じる返事が少し癇に障る

自分の顔と知名度にはそれなりに自信がある
実際に街を歩けば声をかけられるし
任務中に年上の女の呪術師に口説かれることだってある

せっかく自分から声をかけた気遣いと一緒に
プライドまで軽くあしらわれたようで気に入らない

また携帯を触り始めたこの女の気を
なんとか弄んでやろうと声をかけようとするが
さっきの女が追いかけてきて邪魔をされてしまう

「は？いい加減に…って、おい！…ちょっと」

到着したエレベーターに乗り込み
最後まで一度もこちらに目を向けず降りていった先輩

伸ばした手もかけた声も全く相手にされず
鬱陶しい女とエレベーターの前に取り残された

「…まじ、覚えてろよ、あの女。」