チューベローズの初恋【呪術廻戦】 (ページ38)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:774,028 hit

37 ページ38

:

呪霊でドッジボールするのは諦め
夜蛾先生の暑苦しい所で山手線ゲームをしていると
さっきまで補助監督と話をしていた柳井さんに名前を呼ばれた

手招くような仕草に立ち上がり、足を運ぼうとすると
隣で座っていた五条君に手を掴まれる

彼の所へ行くのを拒むように腕を引っ張り、首を振る姿に
内心では愛らしく思いながらもゆっくり手を払った

あくまで仕事なのだから、
柳井さんの話など放っておいて
手を引く彼の隣に戻るわけにはいかない

拗ねたようにそっぽを向く五条君に
罪悪感や愛おしさが入交り、胸のあたりがじりじりと疼く

違和感があるが決して嫌ではない
あまり感じたことのない感情を持て余しながら柳井さんの所へ向かった

『どうしました。』

「連絡先、聞いてもいい？」

『…なぜです？』

「任務以外でも君と会いたいんだ。」

頬に手を当て、親指で唇をなぞる柳井さん
耳元に顔を寄せ今夜どう？、と甘く囁かれれば
以前なら何の迷いもなく彼に付いて行っただろう

目の前にいるのは柳井さんなのに、
頭の中には向こうで拗ねている五条君がいる

このまま誘惑に負けて今夜この人の所で過ごせば、
彼は悲しむのだろうか
それとも呆れて愛想を尽かされてしまうだろうか

『…嫌だな、』

「え？」

まだ好きじゃない、
自分ではない他の女を探せ、
なんて言いながら離れていく彼を想像すると嫌だと思ってしまう

彼の腕の中に捕まるのを拒みながら
離されるのも嫌がる
本当に自分勝手で我儘な女だ

『すいません。今夜は予定があります。』

「じゃあまた今度にしよう。番号だけ…」

『いえ。もう仕事以外では会いません。』

「…え？」

柳井さんの手を掴み
なるべく気に障らないよう頬から離し
拒むための言葉を選ぶ

『傷つけたくない人が出来たんです。ごめんなさい。』

「…っ」

黙ったまま固まる柳井さんに頭を下げ
車が到着したことを知らせる補助監督の声に振り返ると
すでに夏油君は助手席に、
五条君は車の外でこっちを向いて待っている

こんなずるい女を待ち続けてくれている彼が、
不機嫌そうに、其処にいる

『お待たせしました。』

小走りで車に向かい、五条君の指を握ると
一瞬驚いてサングラスの向こうの瞳が大きく開かれた

しかしすぐに意地悪そうに笑って
なんだよ、と長い指を絡めて遊び始める

『友人関係を改めてるのは君だけじゃないんだよ。』

「…あっそ、」