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ホテルの1階に併設されたコンビニで買った氷を
腫れてしまった脇腹に当てながら電話をかける

本当は早くシャワーを浴びて血と砂埃で汚れた体を洗いたいが
予定より帰りが遅くなったせいで
彼はもう待つのを諦め眠ってしまっているかもしれない


この2週間は本当に忙しかった
昼間は呪詛師の実地調査、あるいは駆除へ
夜は呪霊を祓いにあちこちへ連れまわされた
挙句に急に決まった仙台への出張

学生だぞ、と頭の中で文句を言いながらも自分が蒔いた種なので諦める
疲労とケガで少しずつボロボロになっていく体を
騙し騙し酷使しながら何とか今日も帰ってこられた





『…え?』




―そう、私は今かなり疲れている

頭は回らないし、油断すればこのまま眠ってしまいそうなくらいに





だから電話の向こうの彼の言葉を上手く処理できない

 好き? 私を?

好かれるような覚えはない
彼が好意を寄せている素振りもなかった









「”あいつ、先輩の匂いにめっちゃ敏感なんだよね。”」








あまり多くない彼についての記憶を
曖昧に遡っていくと硝子が言っていた言葉に辿り着いた

これが一番しっくりくる
昼間でも匂いを感じてしまうくらい

彼は私に過敏に反応する


あの空色の目のせいか、
溢れる呪術師の才能のせいか、

優れた呪術師に生まれてしまったばかりに
こんな女に惑わされてしまったのだろう








『……そっか、』


「帰ったら俺に会いに来てよ。待ってるから。」






『…そうだね。もう少し、ちゃんと話そう。』





彼に、なんて説明すればいいのか分からない

天与呪縛だと言ってしまうと〈 縛り 〉が発生し、
きっと余計に五条君を苦しませてしまうだろう









「…ごめん。…もう切るから。…おやすみ、先輩。」




謝ることなんて何もないのに、
辛そうに電話を切ろうとする彼にかける言葉が見つからない






『……おやすみ、五条君。』









通話の切れた携帯をシワひとつない綺麗なベッドに放り投げ
浴室に駆け込み服も脱がずに頭からシャワーを浴びる

血と土に混ざった甘い異臭
嫌で嫌で堪らないこの匂いを早く落としてしまいたかった








― 君は、悪い香りにつられているだけ。 ―

― それは 恋 なんかじゃないよ。 ―





彼にかける言葉を頭の中で繰り返す

恋なんかしたこともないのに
偉そうに他人様の恋を否定しようとする自分を嘲笑いながら






同じ言葉を自分にも言い聞かせた

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(プロフ) - 凄い面白いです!休校中の楽しみですねもう。更新応援してます! (2020年4月13日 10時) (レス) id: b1b211da94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月11日 13時

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