チューベローズの初恋【呪術廻戦】 (ページ20)

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『あ、もしもし。五条君？』

「…遅い。もう12時過ぎてるんだけど。」

『ごめんね。もう起きてないと思ってた…。眠い？』

「眠い。……先輩は？」

寮に戻ってから気にかけ続けた電話が鳴ったのは
ちょうど12時を過ぎて少し経った頃、

またすっぽかされたかと半分諦めて
女の誘いを断って後悔していた所に
タイミングを見計らったようにかかってきた

電話1本で気分が上がったり下がったり
振り回されてる自分に同情しながら通話ボタンを押すと
飄々とした声がこっちの気も知らないで耳に流れてくる

『…ちょっと疲れた。一級って聞いてたんだけど思ったより手ごわくてね。でも今日は君に電話かけたかったから頑張ったよ。』

「…。あっそ、」

素っ気ないなぁ、と電話の向こうで笑うこの女が少し憎い

散々無視したくせに
平気で”かけたかった”なんて言って期待させてくる

『出られなくてごめん。最近急に重い任務が増えてね。』

「重い？」

『そう。事前の情報が誤ってたり、任務外の呪霊が急に出てきたり。』

「…大丈夫なのそれ？タチ悪すぎでしょ。」

『大丈夫。ちゃんと生きてる。』

「…。」

学生の自分でも分かるような明らかな上からの嫌がらせ

いくら先輩が強くて優秀でも
事前の情報なしで任務につくのは危険すぎる

…恐らく、交流会の一件のせいだ

顔に泥を塗られた京都校のやつらが
故意に危険な任務ばかり先輩に押し付け
さらに偽装した資料をこっちに渡しているのだろう

もしかしたら電話の向こうでは怪我で傷付いているかもしれない

あの日自分を守るために動いてくれた先輩が
そのせいで目を付けられて毎日危険に晒されている

不満や嫌味の一言でもぶつけてくればいいのに、
笑って子どもみたいな自分のわがままを聞いてくれる

：

：

「…絶対、死なないでよ。」

『うん。…約束は出来ないけどね。』

初めてあったあの日から
この人に振り回されてばかりでこんなの俺らしくない、

一途に誰かを想うような人じゃない、

いつも気の向くままで
誰にでも都合よく甘える野良猫みたいな人、

どうせ気まぐれに遊ばれて、重くなったら捨てられる

後で後悔するのは分かっているのに

それでも先輩のモノになりたいと思ってしまう

：

：

「俺、香月先輩が好き。」

蓋をしていた思いが、

あっけなく開いてしまった