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[彼女は僕と同じ、知識を愛した人だった。
彼女とは数年来の友人だった、器量もよし、容姿もそこそこ整っており、あの校舎の中で1番の友人だった。
人格諸々においての欠点をあげるとすればネガティブな思考と、その精密な審美眼。
彼女は人を見る目がとても良かった、いいや良すぎたのだろうか。
いずれにせよ、彼女の長所は初対面の僕にとっては短所に変わってしまった。
その機械のような冷たい目で人を見る彼女に最初は僕も背筋がゾッとしたのをよく覚えている。
今となってはもう慣れてしまったし、彼女を理解したときその悪い癖が彼女なりの防衛本能だということも分かっている。
しかしそんな彼女でさえも、僕が出す初めて聞く話や、授業で先生から聞く歴史には目を輝かせていた。
その目がどうしようもなくきれいで、一種の耽美にも思えたそれを僕は無意識にも愛していたのである。
僕にとってそれは何者にも代え難い1種の宝石であり、その冷たさにひんやりとした、けれどしたたかな愛情と美しさを確かに感じていた。
それが見たいばかり出ここまで来てしまったのだから本当に自分が滑稽な人間だと今になって思い知った。
この生も中々にいいものではあったろうが、次に生きるときはせめてもっと真っ当な人間でありたいと思ったのも言わずもがな。
そんな葛藤を抱えて僕はまた死んでしまう。
ああ可哀想な人生、ああ、なんて皮肉。
楽しかった。
本当に楽しかった。
弁当を食べながら議論しあった日々を、どこにでもあるような通学路をこれはまた大層に我が物顔で歩いた夕暮れを。
君のその変わらない宝石の瞳を。
「神様」
「僕の全てを、すべての記憶と寿命を。
愛情を」
地獄と楽園がそこにあるような素晴らしい日々をありがとう。
どうか、どうか。
散り切る前の桜の花のような儚いあなたが
沈んでいく蓮の花を思わせる虚無のあなたが
秋の木の葉が似合うあでやかなあなたが
雪を被った梅の木の如くしたたかなあなたが
「花流へ」
大好きでした。]
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - 517さん» 517様、閲覧及びコメントありがとうございます!長かったでしょう(苦笑)そう言って頂けるととてもありがたいです。更新は停滞気味ですが気長に待って頂けると嬉しいです! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 6e12f91009 (このIDを非表示/違反報告)
517(プロフ) - とっても面白くて最新話まで一気に読み進めちゃいました! (2021年3月31日 1時) (レス) id: a380db26d5 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - はい。楽しみにしてます。 (2020年10月17日 8時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - ひかりさん» 閲覧及びコメントありがとうございます!SCPご存知の方中々いらっしゃらないですよね……。SCPで何か書けたらいいなぁと思っています(笑)改めて、ありがとうございました! (2020年10月16日 23時) (レス) id: 6e12f91009 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - こんなところでSCPを嗜んでいる人に出逢えるとは思ってもいなかった (2020年10月16日 22時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久坂朧@三色団子と朧は神 | 作成日時:2020年3月31日 9時