夢に彷徨う 【名探偵コナン】

296 電話 ページ8

side工藤


夜、鈍い空、街灯が細い路地をチカチカと照らしている。


俺達は犯人を誘き出すため、長野県警だけでなく、俺たちまでも変装をし、犯人を炙り出していた。


勿論上手くいった、諸伏警部が酔っ払ったおっさん、上原、大和警部ペアは柄の悪いカップル、蘭はすぐ側の部屋の住人、小五郎のおっちゃんは下着泥棒。


因みに何故おっちゃんが下着泥棒になったのかは知らない、諸伏警部が何故酔っ払いの配役になったのかも不明。


しかし2人とも迫真の演技だったので笑ったのは此処だけの話だ、巴さんにもこのビフォーアフター見せてやりてェ……。


そう思いながら2人の写真を撮った、中々の化けっぷりだ。


俺は駅での、巴さんの最後の言葉が如何にも引っかかっていた。


しかしそれが何故かが今ようやく分かったので、それを目の前に居る蘭やおっちゃん達に教えた。


「──────って、巴さん言ってたよ！！」


何故巴さんが今回の事件でこのトリックを使うと知っていたのかは知らない、だが流石世界一の技術者と名乗れる程である。


蘭はなんじゃそりゃ、という顔で俺を見ていたが。


「へー……巴ちゃんが」


俺と蘭がそういうと、諸伏警部は何故かずっと俺をみていた、まあそんなこともあり、事件は見事解決、俺は上原刑事に連れていかれる犯人の背中を見ながら電話を掛けた。


思いの外直ぐに繋がった電話、俺は巴さん、と声を掛けると。


『何だ、夜遅くに。


もしかして犯人捕まったかな？』


「うん、流石世界一の技術者って呼ばれるだけあるよ」


『…………これで、少しは警戒した？』


そう言われてぎょっとした、普通そんなこと言う人は大体良い人だって相場が決まってんのに。


「ううん、やっぱりボク、巴さんのこと悪い人とは思えないんだ」


この人は、俺の良き理解者であろうとした、コーヒーを飲んでも疑ったりもせず、タメ口で話しても頭を撫でる。


俺よりも歳下の癖に、妹でも居るのだろうか、そう思うくらいにはとても面倒見が良く、俺に不快感を決して与えようとしなかった。


人の扱い方が分かっていた。


『少年らしい答えだね』


如何なっても知らないよ、と言われたので、巴さんボクのこと大好きだもんね、と言うと彼女は笑った。

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