夢に彷徨う 【名探偵コナン】

334 二人 ページ47

「如何したんだ？」


「貴方は貴方なんですよ」


見透かされた様に言われた言葉に反論も、返答と出来ない俺はただ黙ることしか出来なかった。


「……」


「例え貴方が違う貴方であっても、それは貴方なんです」


貴方は1人しか居ないんだから。


子守唄の様にも聞こえる、テンポのよい、背中をトン、トン、と叩かれる様な、鈴の声は、興奮した俺を落ち着かせるのに十分だった。


「人を殺しても、嘘を吐いても、貴方なんですよ」


其処から逃げてはいけないんです。


其処から目を背けてはいけない。


「私は、人が嫌いです」


「……」


「大っ嫌いです、でも」


「貴方は、いえ。


諸伏景光という男も、スコッチという男も、私は大好きですよ」


「……！」


「諸伏景光という、自らとその他を犠牲にし、国を守ろうとした貴方を。


スコッチという、友を守らんと自害しようとした貴方も、そして私を守ろうとしてくれている緑川唯も。


私は、大好きなんですよ」


勿論、烏滸がましいというのは自覚していますが、と続ける彼女に、俺は呆然とした。


ああ、そうだ。


俺は諸伏景光だ。


でもスコッチも、俺だったな。


掛け替えのない、俺自身だったな。


「いい加減目を覚まして下さいな」


そう言っている彼女は、何故か泣いていた。

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