325 内通 ページ38
side諸伏
「先輩が……」
俺を売った、とは、考えられなかった。
緑川邸、午後8時。
唐突に連絡も無くやってきた巴と鳥山さんにびっくりしたが、訳ありだろうと思い中へ居れると、真逆の内通者の情報であった。
巴に目を逸らされたが、無言で長官からの電話を繋げたまま携帯を差し出す彼女に何を言うでも無く受け取れば明るみに出る真実。
しかも、俺の先輩。
「長官、何でそんな」
『何でだろうな、俺も詳しくは分からん』
ただこれまで以上にカジキを気に掛けてやってくれ、と頼まれたので更に不審に思い始める。
「勿論そうはしますが、何故です?」
『……安東はカジキの同期だ。
幾らお前の命を何とか繋ぎ止めてくれたとは言えど、例えカジキの娘であっても、彼奴をこの警察組織の闇に巻き込む訳にはいかない。
いかなかったんだけどな、お前の安全性を考えたら間違いなくカジキに頼んだ方がいい』
彼奴もお前の為ってやる気だから、と言われて、彼女に大切にされてる俺に初めて気付いた。
その感想はと言えば、妙にくすぐったい感覚はあれど、情けなくもなった。
無力な自分が、情けない。
「……長官、何でも命令して下さい。
元はと言えばこれは私の問題です」
『それは勿論その心算だ、が、お前も未だ動ける立場じゃない』
「ですが」
『いいか、お前はカジキに何も言われない限り迂闊な行動はするな』
「…………」
片方の何も持っていない手を強く握る、それを遠くに居る筈の長官は、見兼ねた様に続けた。
『……これは命令だ、折角カジキが繋いだ命なんだぞ』
粗末にする気か、と言われて握る手を更に強くした、不意にその手に何か触れた。
巴の手だった、金色の瞳をゆらゆらとさせながら俺の手に触れる彼女を不安にさせた様で、すまん、と一言口にした。
『何なら、黒田に電話を変わってやってもいいんだぞ』
「うっ、いえ、もう大丈夫です」
それは嫌だ、本音を言えばあの降谷が畏怖する存在になぞと電話したくない。
『そうか、まぁいいよ。
それから頼みがある、カジキを監視しとけ』
理由は聞くな、と言われて一方的に電話を切られた。
「……諸伏さん?」
この作戦で絶対に無理をするであろう、俺を心配する様な彼女の表情に、俺は酷く心を打たれる。
……未だこんなに小さな子に護られていたんだ、俺は彼女を抱き寄せて精一杯抱き締めた。
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - さちさん» さち様いつもありがとうございます!出会っちゃいましたね、2人……。そう言って頂けるとこちらも励みになります、改めてありがとうございました!! (2019年10月5日 21時) (レス) id: 9224d831df (このIDを非表示/違反報告)
さち - 何度も読みに来ちゃいます。おもしろいです。ヒロとゼロの邂逅。続きが楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年10月4日 19時) (レス) id: 5f335610e5 (このIDを非表示/違反報告)
久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - さちさん» さち様いつもありがとうございます!出ましたね高明さん(笑)これからも頑張って参りますのでよろしくお願いします!! (2019年9月10日 17時) (レス) id: 9224d831df (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろいです。高明さん出てきましたね。続きが楽しみでしかたないです。よろしくお願いします。 (2019年9月10日 12時) (レス) id: a4eca54f61 (このIDを非表示/違反報告)
久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - 水城紗綾さん» 水城様!いつもありがとうございます!はい、更新頑張らせて頂きますので、是非とも今後も楽しみにして頂ければと思います!改めて閲覧及びコメントありがとうございました! (2019年9月8日 19時) (レス) id: c1dc633bc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久坂朧@三色団子と朧は神 | 作成日時:2019年9月6日 18時