きっとまた逢える 2 (ページ39)

今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:433,070 hit

77 新幹線の中でページ39

・

・

私は、大阪へと向かう新幹線の中で、最近栞を挟みっ放しだった文庫本を開いている。

でもやっぱり、目は同じ箇所ばかりを追ってしまって、内容は全く頭の中に入ってこなかった。

・

・

・

先週末の、あの日の明け方。

私は、微熱程度に下がった二宮さんを見届けた後、二宮さんを翔さんに託して帰宅した。

・

・

そして今、ユウさんに別れを告げるために、大阪へと向かっている。

・

・

大事な話があるから、と言っておいたものの、ユウさんは、私が遊びに行くと思い込んでいて。

私が行く事をとっても喜んでくれていることが、気を重くしている。

・

・

私、大阪のユウさんの部屋に、まだ行ったことなかったな…

・

いつも言い訳して、ユウさんから会いに来てくれるのを待ってて。

行くと行っただけであんなに喜んでくれたことを思うと、この後私は、本当に別れを切り出すことができるんだろうか、と不安になる。

・

この間、ユウさんが東京に来てくれた時に、ちゃんと話せばよかった。

・

あれから、何度そう思ったかわからない。

・

・

だけどあの時は、翔さんの気持ちにまだ確信が持てなかった。

私と始めたい、と言われたところで、まだ信じ切れていなかった。

・

でも、翔さんが彼女に別れ話を切り出したと知って、私もこのままじゃいられないと思った。

・

・

私はズルい…

・

ユウさんよりも好きな人がいる以上、もうこのまま付き合うことなんてできない。

ユウさんに対して、誠実にならなきゃ、なんて。

翔さんの気持ちを確かめてから行動に出るなんて、私は不誠実極まりない女だ。

・

ユウさんが今日まで私にくれた、数々の優しさと愛情を思うと、自分のズルさに自己嫌悪に陥る。

・

・

それでも、言わなきゃいけない。

だって、もうどうしようもなく、翔さんが好き。

・

ちゃんとそれなりに恋をしてきたつもりだったけど、年を重ねるにつれて、無意識のうちに打算も働いていたような気がする。

・

・

・

先の見えない恋だけど。

それでも私は、翔さんという一人の人を、誰に咎められることなく私の全部で愛したいと思う。

・

・

・

・

「Ladies and gentlemen. We will arrive at Shin-Osaka terminal in a few minutes. …」

・

アナウンスが聞こえると、周りの乗客が忙しなく荷物をまとめ始めた。

・

・

・

もうすぐ、ユウさんが待つ大阪に着く。