きっとまた逢える 2 (ページ30)

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二宮さんの寝室に入って行った櫻井さんの、小さな声が聞こえた。

櫻井さんはすぐに寝室から出てくると、「いつでも呼んで」と中に声をかけ、そっとドアを閉める。

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「…ニノ、結構熱高いな」

「そうなの…」

「まぁ、とりあえず様子見て寝かせてやろう。後でまた水分摂らせてさ」

「うん」

「…一杯、飲む？」

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キッチンに立って冷蔵庫を開けた櫻井さんが、私に缶ビールを掲げる。

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「ううん、いい。さっきもう飲んだから。…お水があったら、欲しいんだけど」

「あるよ」

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櫻井さんは自分用の缶ビールと、私のためのミネラルウォーターのペットボトルを持ってきてくれた。

それを受け取ろうとしたら、櫻井さんは一度私に手渡そうとしたそれを、あ、と何かに気付いたように引っ込める。

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「はい」

そしてキャップを捻ってから、もう一度、私に差し出した。

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「ありがと。…優しいのね」

「え？何が？…キャップ？」

「うん」

「こんなの普通でしょ。笑」

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櫻井さんはさも当たり前みたいに笑って、ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを美味しそうに飲む。

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上下に動く、喉。

それに急にオトコを感じて目を逸らし、私も、櫻井さんがすでに弛めてくれていたキャップを外して水を飲んだ。

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このくらいのキャップ、誰にだって簡単に開けられる。

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でも、櫻井さんの彼女は、こんな些細なことさえも当たり前にしてもらえるほど愛されてるのかな、って。

喉を冷たいものが通り過ぎた時、胸が少し、チクン、と痛んだ。

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「明日、仕事は？」

「私、土日休みなの。櫻井さんは？」

「明日は俺、昼からだからさ、今夜はここに泊まるよ」

「よかった…」

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櫻井さんが二宮さんのそばについててくれるとわかって、ホッとした。

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でも。

それなら私はもう、ここにいる必要はない。

むしろ、いつまでも私がここにいることで、櫻井さんは私に気を遣って寝ることもできないんだから、

私は、早く帰らなきゃいけないんだと気が付いた。

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「…私、」

「帰んなよ」

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櫻井さんは缶ビールをテーブルの上に置くと、その手で私の手を掴む。

さっきまで手にしていたビールに熱を奪われた、その冷たい指先に触れられただけで、キュンとした。

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「明日、休みならいいじゃん。やっと会えたんだ。…帰んなよ」

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私は、その手を握り返した。