きっとまた逢える 2 (ページ1)

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元々俺は、一年程前から家庭教師のバイトをしていた。

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尤も、専門の業者に登録しておいて派遣先を紹介されるケースではなくて、知り合いから直接頼まれて請け負うパターンのそれで。

大体バイト代もいい上に、親に気に入られれば成績アップの度にちょっとした額の心付けを貰えて、豪華な晩飯まで一緒にどうぞ、なんてことも多くて。

束縛される時間の割に待遇が良くて、無駄な時間を費やしたくない俺には合っていたと思う。

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大学三年になる頃。

担当していた二人の高校生の生徒が志望校へ合格したことで、俺は又、春から新たな生徒を探す必要があった。

だから普段つるんでる友人達にも、知り合いで家庭教師を探してる家があったら教えて欲しいと、そう声をかけていた。

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「ねぇ、うちの子の家庭教師やってもらえないかしら？」

ちょうどそのタイミングで言われたのは、入学時のガイダンス以来ずっとつるんでた友人の母親から。

どうしても今日中に借りたいノートを、俺が頼んでたことをすっかり忘れていた友人の自宅まで、彼と一緒に取りに行った時のことだった。

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リビングで、彼の母親と一緒に紅茶を飲んでる時、なぜか話の流れでそうなった。

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「もちろんです。僕なんかでよかったら」

渋る友人を他所に、トントンと話はまとまった。

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うちの子、と彼の母親が言っていたその生徒が娘だったとは、まだその時は知らず。

てっきり俺は、友人に似た、頭の回転の早い弟なんだろうと思っていたから。

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翌週、彼の家を訪れた時に玄関に出迎えてくれた君を見て、俺は唖然とした。

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その後、何度となく君は、その時の俺の顔を思い出してはクスクス笑ったよね。

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てっきり、理屈を捏ね回す、実は家庭教師なんていらないくらい優秀な弟の、形だけの面倒を見ればいいと思っていたから、

というだけじゃ、ないんだ。

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一目惚れ、だったんだよ…

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玄関のドアを開けてくれた瞬間の、君の少しはにかんだ表情。

深々と俺に頭を下げて、よろしくお願いします、と言った柔らかな声。

顔を上げて長い髪を耳にかけると、意外にもそこは赤く染まってた。

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釣られて、俺まで頭に血が上っちゃってさ。

君にも君のお母さんにも、その後何て挨拶したか、実は全く覚えてないんだ。

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ヘタレだったのは、この頃からだったってことだね。笑