ー2 ページ24
.
その日の帰りの電車、止まらない涙を隠す事で必死だった。ヒクつきそうになるのをなんとか堪えていると、お尻に当たる何か___いや、コレは手だ。
こんな日に痴漢なんて…
でも、もうどうでもいいような感覚になり、どうせもうすぐ駅だと放っておくと、その手が直接太ももを摩り、上へと。流石に焦った。
ヤバイ、どうしよう。
声を出す事も、振り返る事も怖くて固まっていると、真後ろに居るであろう痴漢男が「ヒィ!」っと小さく悲鳴を上げた。
すぐに離れた手にホッとしていれば、到着した駅で開いた扉から慌てて飛び出て行く男を見た。多分、犯人だ。
「大丈夫か?」
後ろから、取り逃したと謝るこの人はどこかで…
あ。朝、同じ電車に乗ってる…
『大丈夫です。あの、もしかして、助けてくれたんですか?』
「……」
『ありがとうございます!助かりました!』
「大した事はしていない。それより__」
恐らく涙目だったのだろう。ハンカチを差し出す彼はなんて紳士なんだろう。
「あのゴミカス。やはりぶち込んでやるべきだったな。大事にするのは気が引けたが。」
今からでも、と電車を降りようとする紳士だった彼を止めたが、彼の怒りは収まらず、どう処分する。どう責任を取らせる。どんな目に合わせてやろうか、と。
余りの怖さに痴漢が原因ではない、振られたのだと、余計な事まで付けてしまった。
『わ、私は…その、重いらしくて…。』
なるべく何でもない事のように話したつもりだったが、今日初めて会話をした人に何を言っているんだろう。そんなんだから重いって言われるんだ。
でも、今、堪らなく誰かに聞いて欲しくて。
止まらなかった。
「………一番前の端で寝ている奴か。」
『え…?』
「俺も同じ電車だからな。」
君が奴を幸せそうに見ていたのを知っている。
細められた目はとても優しくて、私の愚かな行いも受け入れてくれるみたいで。
耐え切れず涙が出た。
『………ピアス、貰ったんです。嬉しくて、嬉しくて。でも、彼女に気に入らないって言われたから…腹いせに誰でもいいから渡しただけみたいで…』
「……」
『私、勘違いして…鞄につけて…手作りのお菓子なんて気持ち悪い事して…告白、なんてしちゃって。』
悔しくて、恥ずかしくて。
ぐちゃぐちゃの纏りのない話を彼は黙って聞いてくれていた。
多分仲がいい子だったら、言えなかった。
私の事を知らない人だから、今だから話してしまった。
.
118人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユリア(プロフ) - ねぇえええええまって私も聞いてない久々ツク開いたらなんなのこれ何で呼んでくれな(死) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 5f1067fe3a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - みおさん» ありがとうございます💖もう少し更新続きますので楽しんで頂ければ嬉しいです💖感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひの新作通知もずっと待ってる!待ちすぎて舞ってる💃唯梨さんの実弥読めて私も嬉しかったよ!爆速過ぎて吹いたけどね!笑 いつも感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - みんなお祝いコメントありがとうっっっ🥰❤️もう書かねェ…!って思ってたけどみんなのおかげで創作意欲が湧きました!今後ともよろおねでっすー💁🏻♀️❤️❤️ (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 奏海さん» かなみちゃんありがとうね🥰❤️色々落ち着いて戻ってきちゃった🧡🧡🧡🧡 (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:京華/唯梨/羽糸/ひよ/あさひ x他4人 | 作者ホームページ:ありません
作成日時:2022年9月21日 11時