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『おかえりなさいませ。』
「おぅ……世話ンなる。」
『ご無事でなによりです!』
久しぶりに立ち寄った家紋の屋敷。
握り飯の女の名前はAだったか…苗字を教えろと言うのに家業でやってっから此処全員同じ苗字だと俺に名前で呼ぶよう言ってきたAは気立てがいい、その言葉がしっくり合う女だった。
二度目の再会時には軒下で寝ようとしたり、施しを受けようとは思ってなかった今より尖った俺に対しても根気よく…いや、ある意味言い方悪くすりゃ屋敷内ではやたらと付き纏うように傷だらけの俺を介抱しようと気を回してきていた女。
「今日、飯はいい。外で食ってきた。」
『そうでしたか。それでは湯浴みされたらお抹茶と茶請けをお持ち致します。』
「…いや、いい。」
『おはぎですよ?』
「…………貰う。」
Aは俺の好みを言わなくても会話から拾い、見た目で怖がる事もなく接してくる。そして___控えめで嬉しそうに笑う。
荒んだ地域で育ってきた俺からしたら住む世界の違う、上品な女だと思った。元の俺との身分は違えど鬼に身内を殺され入隊の道を歩んだ鬼殺隊士なんざ掃いて捨てるほど居た。この女と話すとき、ふと柔らかい思考になる瞬間がある。
そんな時は馴れ合った仲にならねェよう突き放そうとすれば、空気は読めるのかコイツは近付いて来なくなる。そんな塩梅ですら心地よいと思ってしまう頭は毎度井戸の水で冷し、後先考えず全身に水を被った俺を見て慌てて替えの浴衣を手に持ち走ってくるAを完全に突き放す気には何故かなれなかった。
*
「今から買い物か?」
『近場ですのですぐ帰れますから。香い袋も持ち歩きますし大丈夫です。』
「………」
片手ほどこの屋敷に泊まった頃。まだ日は暮れない時間だったが遣いを頼まれたであろうAと玄関で鉢合わせた。家紋の屋敷の女だ。鬼の存在は知ってっから迂闊に日が落ちる時間にはなんねェだろうとは思うが、つい…昔を思い出し、見つからない程度の距離を保ち後を付いて行った。
ずしりと重そうに買付けの荷物を受け取るAの背後から、その荷物を代わりに持つ。驚くAは無言でかわし、来た道を二人歩く。
『ありがとうございます。』
自分が持つと荷物を俺から引ったくろうとしていたAとの勝負は勿論俺の勝ち。やっぱ人と関わると駄目だな…つい昔玄弥と買い出しやら行った事を思い出す。必要以上に関わりたくも無かったのに衣食住が整うと、つい甘い事をしてしまう。いや、お袋が女と弱い奴には優しくしろっつってた。俺はその約束を守ってるだけだ……問題ねェ。
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ユリア(プロフ) - ねぇえええええまって私も聞いてない久々ツク開いたらなんなのこれ何で呼んでくれな(死) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 5f1067fe3a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - みおさん» ありがとうございます💖もう少し更新続きますので楽しんで頂ければ嬉しいです💖感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひの新作通知もずっと待ってる!待ちすぎて舞ってる💃唯梨さんの実弥読めて私も嬉しかったよ!爆速過ぎて吹いたけどね!笑 いつも感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - みんなお祝いコメントありがとうっっっ🥰❤️もう書かねェ…!って思ってたけどみんなのおかげで創作意欲が湧きました!今後ともよろおねでっすー💁🏻♀️❤️❤️ (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 奏海さん» かなみちゃんありがとうね🥰❤️色々落ち着いて戻ってきちゃった🧡🧡🧡🧡 (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京華/唯梨/羽糸/ひよ/あさひ x他4人 | 作者ホームページ:ありません
作成日時:2022年9月21日 11時