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晩秋にしては暖かな日。



遊び疲れたのか、開けにくくなったらしい目元を無造作に擦りながら、その子は父親の膝へとよじ登る。


だいぶ重くなってはきたが、彼には何ということはないのだろう。軽々と引き寄せ、膝の上へとのせた。


あやすように軽く背を叩かれ、安心したのか。
子は彼にもたれかかるとすぐ、目を閉じた。



子供の相手が上手いのは、かつての彼に、6人もの弟妹が居たからだと。


今の私はちゃんと、知っている。



「………寝ちまったかァ」



そのふくふくとした頬を指先で撫でながら、彼は柔らかく笑う。相槌を打って、高い高い空を見上げた。



胸を張って言える。

今の私は本当に幸せだと。
この先どんなに淋しくなろうとも、幸せなのだと。



「ハハ………お前は結局、捨てなかったなァ」



何を、と問うような真似はしない。
元より捨てる気など無かったが。



『……私は満たされましたよ。貴方のことを知れて』


「そうかィ」


『貴方はどうだったのです?』



甘やかな言葉を求めた訳では無かった。
ただ最期くらい、と思ったのも事実。


そうさなァ、と子を優しく撫でながら、彼も空を見上げる。



「胸張って皆に言えンだろ……………最期まで本当に、幸せだったって」



瞬間、熱いものが込み上げそうになったのを、目を細めて誤魔化した。


伸ばされた手を取り、指を絡めて。
顔を見合わせ、ただ静かに笑い合う冬の前。











今は一度、さよならだけれど。


ありがとう。
ありがとう、実弥さん。





…………………また、いつか。






「また、いつか。」 完


ひよ

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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥 , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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ユリア(プロフ) - ねぇえええええまって私も聞いてない久々ツク開いたらなんなのこれ何で呼んでくれな(死) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 5f1067fe3a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - みおさん» ありがとうございます💖もう少し更新続きますので楽しんで頂ければ嬉しいです💖感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひの新作通知もずっと待ってる!待ちすぎて舞ってる💃唯梨さんの実弥読めて私も嬉しかったよ!爆速過ぎて吹いたけどね!笑 いつも感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - みんなお祝いコメントありがとうっっっ🥰❤️もう書かねェ…!って思ってたけどみんなのおかげで創作意欲が湧きました!今後ともよろおねでっすー💁🏻‍♀️❤️❤️ (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 奏海さん» かなみちゃんありがとうね🥰❤️色々落ち着いて戻ってきちゃった🧡🧡🧡🧡 (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:京華/唯梨/羽糸/ひよ/あさひ x他4人 | 作者ホームページ:ありません  
作成日時:2022年9月21日 11時

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