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勢いに任せた“一生のお願い”を冨岡くんは受け入れてくれた。「俺なんかで良いのか?」とは聞かれたけれど、その時の私は人生初のピアスに浮かれていたから──深く気に留めてはいなかった。





両耳につけられたファーストピアスを鏡で確認すると、思わず口元が緩んだ。


『ふふ。ありがとう』
「失敗…してないと良いが…」
『ばっちりだよ』
「痛くないのか?」
『うーん、痛くはないかな…ジンジンする感じ』


心配そうに私を見る冨岡くん。
この人がこんなにも表情豊かな人だとは、今日一緒にいなければ、この先知ることはなかったのかもしれない。


「今日は…飲むのはもう止そう」
『え、全然大丈夫だよ?』
「安静に休んだ方が良い。家まで送るから」


涼しい顔で大袈裟なことを言う冨岡くんが可笑しくて、笑いを堪えていると「なんだ?」と彼は眉間に皺を寄せた。


『じゃあ、今日は帰ろうかなあ』


ちょっと、名残惜しい気もするけれど。
そう思った瞬間、蘇る冨岡くんの指の感触。むず痒い感覚を誤魔化すように、近くに置いていた鞄を引き寄せた。


「…また、飲もう」


別れ際、冨岡くんが放った一言は意外だった。
大して盛り上がる会話は無かったけれど、彼なりに楽しいと思ってくれたのは素直に嬉しかった。気兼ねのない、大学生の男女の飲み会。案外こういうのは貴重なものなんだろうと思う。


『また今度、今日みたいな日があったらいいね』


冨岡くんの家で感じていたむず痒さに、甘酸っぱい感情が混じって、その日は明け方まで起きていた。







✳︎







あの日から一週間以上が経ち、夕方からバイト先へ出勤すると、1時間前に出勤していた冨岡くんがキッチンの奥で作業をしていた。


『お疲れ!なんか久しぶりだね』
「…お疲れ」


至って通常モードの冨岡くんに挨拶を終え、ホールへ出ようとした時のことだった。


「A、ちょっと…」


呼び止めたのは、紛れもなく冨岡くんだった。


「今日、一緒に帰ろう」
『え?でも、冨岡くんの方が上がる時間早いでしょ?』
「終わるの、待ってるから」


感情が追いつかないまま、返事をすると冨岡くんは持ち場へ戻って行った。その表情は、この前よりもずっと固いように感じた。





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ー3→←冨岡義勇(羽糸)



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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥 , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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ユリア(プロフ) - ねぇえええええまって私も聞いてない久々ツク開いたらなんなのこれ何で呼んでくれな(死) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 5f1067fe3a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - みおさん» ありがとうございます💖もう少し更新続きますので楽しんで頂ければ嬉しいです💖感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひの新作通知もずっと待ってる!待ちすぎて舞ってる💃唯梨さんの実弥読めて私も嬉しかったよ!爆速過ぎて吹いたけどね!笑 いつも感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - みんなお祝いコメントありがとうっっっ🥰❤️もう書かねェ…!って思ってたけどみんなのおかげで創作意欲が湧きました!今後ともよろおねでっすー💁🏻‍♀️❤️❤️ (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 奏海さん» かなみちゃんありがとうね🥰❤️色々落ち着いて戻ってきちゃった🧡🧡🧡🧡 (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:京華/唯梨/羽糸/ひよ/あさひ x他4人 | 作者ホームページ:ありません  
作成日時:2022年9月21日 11時

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