【A3!】雨、やまないね。【碓氷真澄】

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ビックリした声をあげると、
向こうも少し驚いた顔をした。


「おっ、A。なに、どうしたの？久しぶり」


穏やかな笑みを浮かべながら、
エレベーターに乗ってきた。


「お久しぶりです」


至さんは、お母さんと一緒の部署の人。

つまりお母さんの後輩ってところ。

お母さんのせいでよくここに来ているせいか、
至さんとは顔見知りになった。


「わかった。また彩さんのおつかいか」


そう言って少し苦笑いする至さんを見上げる。


「当たりです笑。せっかく真澄と買い物してたのに」

「ああ、あの幼なじみ君だっけ？」

「はい」


コクンと頷く。


「最近どう？進展は」


至さんは、唯一私が真澄の事を好きって知ってる。

なぜだか至さんには話せた。


「特になにも…」

「そっか」


フッと微笑む至さん。

この笑顔のせいかも。

こんな優しい笑顔されたら、
誰だって弱音の一つや二つくらい零しちゃうよ。


「どうしたもんかねぇ〜。
その鈍感な幼なじみ君は」

「ははっ。あ、今日写真撮れたんですよ！｣


ほら！と至さんに写真を見せる。

「お、よく撮れてる。よかったね」

「ふふっ」

至さんを見上げてから、また写真に目を向けた。


「ハハ、やっぱ攻略とか無理ゲーだわ」

「？またゲームですか？」

「ううん、違う違う」

至さんが首を横に振ったと同時に

ﾁｰﾝｯ

とエレベーターのドアが開いた。

「あ、8階だ！至さんもここですよね？」

「うん」

そう言って一緒にエレベーターを降りる。

たくさんの人たちが働いてるデスクの奥。

そこにお母さんはいる。

つまり、なんて言うんだろ…。

たぶんこの部署で一番偉い人だ。

「お母さーん……いたいた」

カタカタと必死にパソコンと睨めっこをしているお母さんの姿。

「あら、A！」

私に気づくと駆け寄ってきた。

「はい、これ」

そう言って頼まれた書類を渡す。

「ありがとう！本当ごめんね」

「いいよ、別に」

申し訳なさそうな顔をするお母さん。

よくあることだし。

「じゃあ、私帰るね」

「うん！今度何か買ってあげるね〜」

そういうお母さんに手を振って
私は部屋から出た。

「あ、A。もう帰るの？」

エレベーターを待っている時、
至さんにまた会った。

「はい。もう届けたんで」

手のひらをパッと開いて、
書類がないことを見せる。

「そっか。じゃまあたね」

「はい！お仕事頑張ってください」

至さんにペコリと頭を下げて
私はエレベーターに乗った。



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