【A3!】雨、やまないね。【碓氷真澄】

21 ページ21

.




熱で頭がボーッとする。







私は「よかったね」と言おうと笑おうとした。

なのに、口角に力が入らない。







「っ………」






「…A」


「見な、いで……」


「……泣いてる」


「泣いて…っ…ない」







頬に温かい涙がつたう。







これは、違う。

熱のせいだ。

熱があると涙腺が弱くなるってよく聞く。

それだ。

それだよ。

真澄と監督さんのことを思って泣いたわけじゃ……。








「…A」






私の名前を呼びながら
涙を拭いてくれる真澄を見る。








真澄の笑顔が好きだ。





普段笑わない君が

たまに本当に嬉しい時に笑う笑顔が。





本当にずっとそう思ってた。







真澄が幸せならいいって。






真澄が笑ってるならいいって思ってたのに。









「…泣かないで」








そう言いながら、
私の目を見て悲しそうな顔をする真澄。







そのスミレ色の綺麗な瞳の中には私がいて＿＿＿






真澄が悲しんでるのに、

私のせいで心配かけてるのに、









「…A」

「………っ…」





私の目を見て名前を呼んでもらえるのが、
こんなにも嬉しいなんて。








ごめん。

真澄。




最低でごめん。









「……っ、すき」








ごめん。









「すき…っ…ま、すみ…」









ごめん。









「…真澄っ…好き」









.







.








.









＿＿＿私のそばにいてほしい。






.

22→←20

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す