黄色さんが弱ってしまいました。⑵

🎀 ページ32

m.




『すぐに戻ってきます…！』



ドアが閉められた反動で車が少し揺れる。








しんどくてドアに寄りかかり、窓に頭をつけて顔を歪めた。



あまりの気持ち悪さに、膝に置いた手が震える。










「大丈夫っ…？」



加藤の声がしてすぐに近づいてくると
腕に手が添えられた。







「……っ、ぅ……っ、」

「…え？ ……なんて？」



吐きそうだと伝えるが、
本当に吐きそうで上手く話せない。










「マネージャー来たら病院戻ろうね」



普段より優しい口調の加藤の声を背後に、
ドアを開けて車を降りた。






加藤の困惑する声が聞こえるが
歩道脇の植込みの前で膝まづいた。







「……ぁ、はぁ……っ、」



喉までせり上がってきて、思わず胸元を握りしめる。





血の気が引いて体がガタガタと震えて
頭が真っ白になった。












「まっすー大丈夫？吐きそう？」



不意に背中に手が添えられて、
ゆっくり背中をとんとんされると、
ふわふわしていた体がましになっていく。








吐き気は落ち着いて、視線を下に落とすと
右手を地面に付けていた。






「手洗おうか、立てる？」

「…うん」



全面的に支えてくれる加藤に頼りながら
コンビニの入口まで向かった。










『どうしたんですか？大丈夫ですか？』



入口から丁度マネージャーが出てきたようだが、小さい石がくい込んだ手の平が気になった。








＊＊＊








透明の液体が一滴落ちていくのを
放心したように眺めていた。




処置室であの簡易ベッドにまた戻ってきて
血を採られてしんどくて体が動かない。








さっきから傍で看護師がマネージャーに謝罪しているが、何で謝っているのかよく分かっていない。



頭が回らなくてそのまま瞼を閉じた。








“ いつも頑張ってるから、ゆっくり休んで。”




眉間に皺を寄せて、心配そうな面持ちで
目を見つめてきた加藤の声が反芻される。





マンションに着いて加藤が車から降りる直前に
「疲れてるのにごめんね」と謝った。





小山も加藤も細かい気遣いや表情から
心配しているのがひしひしと伝わってきて
本当に優しくて温かいメンバーだと思った。





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