指導．19 ページ20
．
やっと大掃除も終わりを迎え、試しに水を入れたプールに足をつける。
眩しい黄色の電球が照らす度に、反射してきらきらと輝く水面。
…夜のプールって普段見かけないからか不思議な気持ちがする。
ふと上を見上げると、電灯の灯りにも劣らない位に眩い月がこちらを見下ろしていた。
特に何を思うわけでもなく、ただぼーっと眺めていると、急に私の首回りをひやりとした冷たい感覚が襲う。
「…あげる」
首元から手のひらへと移り、一本の缶ジュースが現れた。
そう呟いたかと思えば、近くのホースに持ち替え、その人の後ろ姿しか見えなくなってしまう。
「月島の奢りなんて珍しい…」
入れ替わりのようにすっと私の隣に腰を下ろしたのは赤葦先生。
リングに手をかけプシュ、と新品特有の音をたててジュースのフタを開けると、それだけで爽やかな香りが漂ってきた。
一方赤葦先生はというと、服を着たままプールに飛び込んだ体育会系の二人を遠い目で見守っている。
喉を潤すようにジュースを流しこんでいると、そんな二人がおもむろに近付いてきた。
「Aちゃん」
語尾にハートでも付きそうなほど、やけに甘ったるい声で口を揃えた。
「ちょっと…また余計な事するつもりじゃないですよね」
念を押すような赤葦先生に、木兎先生は若干目を逸らした。
そんな僅かなことも見逃さなかった赤葦先生は、二人の先生方をじっと見つめる。
「ま、そう硬いこと言わずに」
赤葦先生を宥める様な黒尾先生は、ぱしっと私の腕を掴む。
「あ、あの……？」
空になってしまった缶ジュースをすぐ側に置いた瞬間、私の身体は宙に浮いた。
バシャッ、と水が勢いよく跳ねる音がし、視界は全面透き通る様な青色に染まる。
次第に息が辛くなり、ぷはッと水中から脱出すると心配そうに眉を下げた赤葦先生となぜか嬉しそうな木兎先生が真っ先に見えた。
「A、記録更新したな…」
これまたなぜか顔面蒼白の黒尾先生。
飛び込み対決でもしていたのだろうか。
「……ごめん、アホ二人の暴走を止められなかった」
「…逢坂、とりあえず着替えて来なよ」
……びしょびしょになった制服を着たまま、鞄に入れっぱなしだったジャージを片手に更衣室へと向かった。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1658人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
最近私の扱いがひどいんだよ(時雨) - 続編おめでとうございます！岡山は山しかなくて面白くないです(´∩ω∩｀)大都会岡山とか嘘だ！とらのあながないと大都会とは言わない！？…メイド喫茶とかもいいなーとか思ってません。 (2015年2月25日 23時) (
レス) id: a0c5099590 (このIDを非表示/違反報告)
諭吉(プロフ) - *桃の缶詰*さん» そうですよ、山登りだって楽しいじゃないですか！ あんまりしないけど！ お山に感謝です！！ ありがとうございます！！ 続編の方もがんばりますよッ！！ 続編もコメントありがとうございました…！！ (2015年2月25日 20時) (レス) id: 270375a570 (このIDを非表示/違反報告)
*桃の缶詰*(プロフ) - 諭吉さん» ですよね、山がないと水とかできませんからね!!← そう、お山は大事なのですよ((( そして続編おめでとうございます！！！返事が遅れてしまいましたが、これからもずっと楽しみにしますね！！！では、今から続編の方へいきます(笑) (2015年2月25日 0時) (レス) id: 8af6259ff0 (このIDを非表示/違反報告)
諭吉(プロフ) - 舞姫さん» おじいちゃん……！！ 羨ましいです、私の場合はおじいちゃん家はすぐそばなので……（笑） (2015年2月23日 20時) (レス) id: 270375a570 (このIDを非表示/違反報告)
舞姫 - 私が住んでる区は田舎っぽいです… でもおじいちゃん家は名駅の近く なのでおじいちゃん家に行くときは メイトに寄ります… (2015年2月22日 20時) (レス) id: 4ef47ac269 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：諭吉 | 作成日時：2015年1月31日 21時
