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指導.13 ページ14











数学準備室を後にし、やけに重く感じる上靴と一緒に歩く。



あんなことをしている内にすっかり部活は終わってしまったようで、すれ違う人は少なかった。





男子バレー部が使用しているという体育館を通り過ぎようとしたところ、



足元になにかがこつん、と当たる。




なんだろうと思い目線を下に向けると、



青と黄色で構成されたバレーボールが一つ、転がってきていた。




ひょい、とそれを拾い上げ、体育館の中を覗いてみる。





天井も高く、開放的で大きいこの場所でもぞもぞと動き回っている一つの白い影。



その後ろ姿に、私は見覚えがあった。


…というかこの学校で白髪なんて、この人しかいないと思うけど……




「木兎先生!」



静かな体育館に私の声が響く。




その言葉を聞いてばっと顔を上げたその人は、



入り口付近に立つ私を見て、柔らかな笑顔を作った。




「Aか、ビックリした」



ぱたぱたとスリッパ特有の音を奏でながら、大量のボールを抱えた木兎先生がこちらへと歩んでくる。



そんな木兎先生に、先ほど拾った球状のそれを無理矢理乗せた。




「大変そうですね…」



広い体育館にはまだまだ、沢山のボールが無造作に落ちている。


これを一人で片付けていたら、いくらなんでも日が暮れてしまうだろう。





「そうなんだよー…


逃げ足だけは素早いから、困ってんだ」



そんな光景を他人事のように眺めながら、木兎先生は愚痴っぽく溢した。




「手伝ってもいいですか?」



マネージャーでもなんでもない私だけど、これを手伝うくらいならバチは当たらないだろう。




「まじで!? 助かる!」



心底嬉しそうに目を細め、木兎先生はそう告げる。



私より断然歳上なのに、その笑顔からは子どもの様な無邪気さが感じられた。




そんな笑みに、まるで月島先生との事が一気に浄化されたような気分になり、



私たちは作業を再開した。




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最近私の扱いがひどいんだよ(時雨) - 続編おめでとうございます!岡山は山しかなくて面白くないです(´∩ω∩`)大都会岡山とか嘘だ!とらのあながないと大都会とは言わない!?…メイド喫茶とかもいいなーとか思ってません。 (2015年2月25日 23時) (レス) id: a0c5099590 (このIDを非表示/違反報告)
諭吉(プロフ) - *桃の缶詰*さん» そうですよ、山登りだって楽しいじゃないですか! あんまりしないけど! お山に感謝です!! ありがとうございます!! 続編の方もがんばりますよッ!! 続編もコメントありがとうございました…!! (2015年2月25日 20時) (レス) id: 270375a570 (このIDを非表示/違反報告)
*桃の缶詰*(プロフ) - 諭吉さん» ですよね、山がないと水とかできませんからね!!← そう、お山は大事なのですよ(((  そして続編おめでとうございます!!!返事が遅れてしまいましたが、これからもずっと楽しみにしますね!!!では、今から続編の方へいきます(笑) (2015年2月25日 0時) (レス) id: 8af6259ff0 (このIDを非表示/違反報告)
諭吉(プロフ) - 舞姫さん» おじいちゃん……!! 羨ましいです、私の場合はおじいちゃん家はすぐそばなので……(笑) (2015年2月23日 20時) (レス) id: 270375a570 (このIDを非表示/違反報告)
舞姫 - 私が住んでる区は田舎っぽいです… でもおじいちゃん家は名駅の近く なのでおじいちゃん家に行くときは メイトに寄ります… (2015年2月22日 20時) (レス) id: 4ef47ac269 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:諭吉 | 作成日時:2015年1月31日 21時

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