１話 駅 旅立つ ページ1
目の前を行きかう人々。
ベンチに座り駅を見つめる青年が一人。
「一人一人の未来があるんだよなぁ…」
そうつぶやく青年の名前は相葉雅紀。
早足で歩く人、携帯を見ながら行く人、電光掲示板を見上げる人、手をつなぐ恋人たち、親子連れ。
人々の姿を見て少し悲しげに笑みを浮かべる。
「行こうか、ここから俺の旅が始めるんだ」
ベンチから立ち上がって大きく、大きく深呼吸。
改札口へ、人の波に入っていく。
右肩に緑色のリュックを背負った雅紀は列車に乗り込んだ。
高鳴る鼓動を左手でなだめながら座る。顔はうつむいたままでドアが閉まるのを待つ。
発射ベルが鳴る。
顔を上げ窓の外を見る。
景色が動き始めた。
今日雅紀は家出をした。
22歳、青年男性が家出というのはおかしいかもしれない。
只、彼の境遇から言えばその言葉を使うのが適当である。
何故なら普通とは違う人生を送ってきたから。
トンと胸元に手を当てる。
生まれてから今日まで病院という特殊な空間の中で生きてきた。
先天性の心臓病。
10歳まで生きられないと言われた。
笑顔で乗り切った。
20歳まで生きられないと言われた。
ミラクルボーイと呼ばれた。
22歳の春、余命は一年と告知された。
これ以上奇跡は起こらないとまで宣言された。
心臓の機能が限界だった。
心臓の手術、これだけが助かる手立て。
でもそれは限りなく死に近いものであった。
成功率は30％。
失敗すればそのまま心臓は止まる。
「50％ないんだぜ？半分以下ってちょっと待ってだろ？」
手術を受けなければ一年の余命。
失敗の場合はつきるつきる。
命の期限の短さを突きつけられた時、雅紀の中に強い願いが生まれた。
「…思い出が欲しい」
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むつき(プロフ) - あかねこ(o･-･)さん» 初めまして。むつきと申します。楽しんで頂けて感涙です。ありがとうございます。 (2015年1月21日 19時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
あかねこ(o･-･)(プロフ) - 初めて読ませもらいます。ままだ途中までしか読んでませんが、すごく面白いですね！ (2015年1月21日 14時) (レス) id: 4f1c1844f4 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - kaki-pさん» はじめまして。読んでいただきて光栄です！ (2013年1月6日 9時) (レス) id: 7eb0f41743 (このIDを非表示/違反報告)
kaki-p(プロフ) - はじめまして♪HOMEまで一気に読ませて頂きました。面白かったです♪ (2013年1月6日 2時) (レス) id: 0ab9f966ea (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ななっちさん» 20分の格闘の末、出来ました。ありがとう。 (2012年8月2日 21時) (レス) id: 983cbf001b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2012年7月21日 21時
