ブルーライトⅤ (ページ10)

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#210/nico ページ10

SiDe:ニコ

コムドットのことで一喜一憂するAは、メンバーの些細な言動に喜んだり憂いだりする。それはまるでファンの子達みたく純粋で可愛らしく、でも話を聞いていると彼等の近くにいて実際みんなの心にまで触れているのではないかと思わせる瞬間もあった。

「やまととは話し合うとして、ゆうたのことは結局どう思ってるの？」

少し前に告白のようなものをされたらしい。沢山の話題のついでみたくサラッと聞いたけど、割と重大発表だった気もする。でも彼女は上手く答えられずスルーしてしまったと後悔しているようだった。

「あたしも色々と考えてみたけど分からないんですよ」

「それが好きかどうか？」

「友達として好きなのか、それともこれが恋なのかがあんまり分からない」

「うわぁ、出た。そんなのうちだって分かんないよ」

日頃から動画で、好きって何？？って言ってんだからそんな哲学者みたいな質問は勘弁してくれ。２８歳が分からないんだし、それよりももっと年下のAが"好き"を分かってたとしたらうちだって教えて欲しい。

「でもうち的には好きって、分かる分からないとかじゃない気がするんだよね」

「なるほど」

「気がするだけだよ？だって全部分かってたら楽しくないじゃん」

「あたしは、分かってないと告白の答えを出せないんです」

Aは気難しい顔をして首を左右に振った。

「じゃあ、Aはゆうたとどうなりたいと思ってるの？」

「ただ仲良くなりたいだけです」

「やまととは？」

「やまとくんとは、」

復唱したあと、言葉を止めた彼女がうぅんと低い声をあげる。

「やまとくんは…なんだろう」

上手く言えないと口篭ったAは手持ち無沙汰なのかおしぼりで工作をし始めた。せっせと白いひよこを作りながら私に目をやる。

「やまとくんと居ると、なんか緊張するんですよ」

「先輩だしねぇ」

「それに、好きって本人に伝えちゃうと関係が壊れちゃう気がしていつも言えないんです」

「そうだね、それが恋なのかもよ」

関係が壊れても良いから自分の気持ちを言ってしまいたいと、そんな風に思える人に出会えれば、それはそれで幸せなんだと私は思う。そう言うとAは「好きな人がいる事って幸せですよね」と小さく頷いた。そんな彼女のスマートフォンが鳴る。

「あ、ごめんなさい。マネージャーからの電話出てもいいですか？」

もちろんと頭を縦に振る。彼女は慣れた手付きでスマホを耳に当てた。電話を取ったAから目を逸らした私はまたメニューに視線を落とす。