ブルーライトⅤ (ページ6)

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#206/yut ページ6

SiDe.ユウタ

俺はふとした瞬間に気付いた。いつからか自分が、AのことをYouTuberの後輩としてではなく異性としてみていることを。
それは些細なことの積み重ねや、ハッキリとした確証のあるものではない。ただ彼女が笑った時、泣いた時、怒った時、焦った時、彼女の喜怒哀楽のほとんどにやまとが絡んでいると肌で感じて、それに対して俺がモヤモヤしていたからそう結論付けただけだ。

俺は嫉妬していたんだと思う。でも二人のことが好きだから、無理に自分の気持ちを優先してまで行動を起こす気なんて無かった。でもそんなのは時間の問題だったらしい。実際、やまとと喧嘩したAを見て気持ちが変わった。チャンスだと思ってしまったのだ。

「やまとやめて、俺にすれば」

夜の公園に響いた俺の言葉は本気の気持ちであり、勢いで本人にぶつけた願望でもある。しかしAは嬉しそうな顔をするというよりも困惑した顔で俺を見た。だから誤魔化してやろうと、もしくは自分が傷付かないようにと俺は彼女の腕を強く引いてキスする。

「ん……ぐ！」

くぐもった声を上げた彼女からは湿った空気に混じり汗とシャンプーの香りがした。互いの唇が触れたと思えば、体温を感じる前に即座に離れる。
Aが俺の肩を思い切り押し返したからだ。ぐらりと身体が傾いて、バランスを崩した俺はコートの真ん中に尻餅をつく。

「ゆう………、」

暗闇の中で立ち尽くし、地面に手をついた俺を見下ろして何かを言おうとした彼女。しかし喉の奥まで昇ってきたそれを止めて腹に戻した…ように見えた。
なぜやめる、いっそ罵(ののし)ってくれ。思い切り振ってくれ、その為にこうしたと言っても過言ではなかったのに。

「思い切り押して…ごめん」

気難しい顔をしたAはそう呟いて遠くに飛んで行ったボールを取りにいく。俺は何事もなかったみたく振る舞う彼女の背中をコートにしゃがみ込んだまま眺めた。ハッキリと答えを出すのが怖いのだろうなと思った。

「俺のこと押したのがAの答えなんじゃないの」

バスケットボールを拾い上げた彼女にそう告げれば、Aは曖昧な表情をしてみせる。

「そうなのかな」

「そうだよ」

「なら…そうなのかも」

「なんだよ、それ」

吐き捨てるように言えば彼女は会話を途切らせたいのか俺から視線を逸らす。黙り込む俺は、コートに散らばる砂利をぎゅうと手の中に握りしめた。